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国語
小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事をといったところが、唯トロッコで土を運搬するそれが面白さに見に行ったのである。  トロッコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇んでいる。トロッコは山を下るのだから、人手を借りずに走って来る。煽るように車台が動いたり、土工の袢天の裾がひらついたり、細い線路がしなったり良平はそんなけしきを眺めながら、土工になりたいと思う事がある。せめては一度でも土工と一しょに、トロッコへ乗りたいと思う事もある。トロッコは村外れの平地へ来ると、自然と其処に止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の...
良平は毎日どこへ、工事を見物に行きましたか。
良平は毎日村外れへ、工事を見物に行きました。
JCRRAG_011002
国語
小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事をといったところが、唯トロッコで土を運搬するそれが面白さに見に行ったのである。  トロッコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇んでいる。トロッコは山を下るのだから、人手を借りずに走って来る。煽るように車台が動いたり、土工の袢天の裾がひらついたり、細い線路がしなったり良平はそんなけしきを眺めながら、土工になりたいと思う事がある。せめては一度でも土工と一しょに、トロッコへ乗りたいと思う事もある。トロッコは村外れの平地へ来ると、自然と其処に止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の...
トロッコの上にはどのような人が、土を積んだ後に佇んでいますか。
トロッコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇んでいます。
JCRRAG_011003
国語
小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事をといったところが、唯トロッコで土を運搬するそれが面白さに見に行ったのである。  トロッコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇んでいる。トロッコは山を下るのだから、人手を借りずに走って来る。煽るように車台が動いたり、土工の袢天の裾がひらついたり、細い線路がしなったり良平はそんなけしきを眺めながら、土工になりたいと思う事がある。せめては一度でも土工と一しょに、トロッコへ乗りたいと思う事もある。トロッコは村外れの平地へ来ると、自然と其処に止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の...
トロッコは村外れの平地へ来ると、自然にどうなりますか。
トロッコは村外れの平地へ来ると、自然と其処に止まってしまいます。
JCRRAG_011004
国語
小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事をといったところが、唯トロッコで土を運搬するそれが面白さに見に行ったのである。  トロッコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇んでいる。トロッコは山を下るのだから、人手を借りずに走って来る。煽るように車台が動いたり、土工の袢天の裾がひらついたり、細い線路がしなったり良平はそんなけしきを眺めながら、土工になりたいと思う事がある。せめては一度でも土工と一しょに、トロッコへ乗りたいと思う事もある。トロッコは村外れの平地へ来ると、自然と其処に止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の...
つき当りの風景は、どのように展開して来ますか。
つき当りの風景は、忽ち両側へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開して来ます。
JCRRAG_011005
国語
三人はトロッコを押しながら緩い傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心は外の事を考えていた。  その坂を向うへ下り切ると、又同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気もちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこう云った。 「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」 「...
良平はトロッコに腰をかけながら、何ばかり気にしていましたか。
良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていました。
JCRRAG_011006
国語
三人はトロッコを押しながら緩い傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心は外の事を考えていた。  その坂を向うへ下り切ると、又同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気もちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこう云った。 「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」 「...
三人はどのように緩い傾斜を登って行きましたか。
三人はトロッコを押しながら緩い傾斜を登って行きました。
JCRRAG_011007
国語
三人はトロッコを押しながら緩い傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心は外の事を考えていた。  その坂を向うへ下り切ると、又同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気もちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこう云った。 「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」 「...
良平はトロッコに腰をかけながら、何を気にしていましたか。
良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていました。
JCRRAG_011008
国語
三人はトロッコを押しながら緩い傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心は外の事を考えていた。  その坂を向うへ下り切ると、又同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気もちを紛らせていた。  ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこう云った。 「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」 「...
良平はどのようにして気もちを紛らせていましたか。
良平はトロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、そんな事に気もちを紛らせていました。
JCRRAG_011009
国語
「さあ、もう一度押すじゃあ」  良平は年下の二人と一しょに、又トロッコを押し上げにかかった。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼等の後には、誰かの足音が聞え出した。のみならずそれは聞え出したと思うと、急にこう云う怒鳴り声に変った。 「この野郎! 誰に断ってトロに触った?」  其処には古い印袢天に、季節外れの麦藁帽をかぶった、背の高い土工が佇んでいる。そう云う姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一しょに、もう五六間逃げ出していた。それぎり良平は使の帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。唯その時の土工の姿は、今でも良平の頭の何処かに、はっきりした記憶を残している。薄明りの中に仄めいた、小さい黄色...
良平は年下の二人と一しょに、もう何間逃げ出していましたか。
良平は年下の二人と一しょに、もう五六間逃げ出していました。
JCRRAG_011010
国語
「さあ、もう一度押すじゃあ」  良平は年下の二人と一しょに、又トロッコを押し上げにかかった。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼等の後には、誰かの足音が聞え出した。のみならずそれは聞え出したと思うと、急にこう云う怒鳴り声に変った。 「この野郎! 誰に断ってトロに触った?」  其処には古い印袢天に、季節外れの麦藁帽をかぶった、背の高い土工が佇んでいる。そう云う姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一しょに、もう五六間逃げ出していた。それぎり良平は使の帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。唯その時の土工の姿は、今でも良平の頭の何処かに、はっきりした記憶を残している。薄明りの中に仄めいた、小さい黄色...
良平はたった一人、何をしながら、トロッコの来るのを眺めていましたか。
良平はたった一人、午過ぎの工事場に佇みながら、トロッコの来るのを眺めていました。
JCRRAG_011011
国語
「さあ、もう一度押すじゃあ」  良平は年下の二人と一しょに、又トロッコを押し上げにかかった。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼等の後には、誰かの足音が聞え出した。のみならずそれは聞え出したと思うと、急にこう云う怒鳴り声に変った。 「この野郎! 誰に断ってトロに触った?」  其処には古い印袢天に、季節外れの麦藁帽をかぶった、背の高い土工が佇んでいる。そう云う姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一しょに、もう五六間逃げ出していた。それぎり良平は使の帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。唯その時の土工の姿は、今でも良平の頭の何処かに、はっきりした記憶を残している。薄明りの中に仄めいた、小さい黄色...
良平は二人の間にはいると、何をしましたか。
良平は二人の間にはいると、力一杯押し始めました。
JCRRAG_011012
国語
「さあ、もう一度押すじゃあ」  良平は年下の二人と一しょに、又トロッコを押し上げにかかった。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼等の後には、誰かの足音が聞え出した。のみならずそれは聞え出したと思うと、急にこう云う怒鳴り声に変った。 「この野郎! 誰に断ってトロに触った?」  其処には古い印袢天に、季節外れの麦藁帽をかぶった、背の高い土工が佇んでいる。そう云う姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一しょに、もう五六間逃げ出していた。それぎり良平は使の帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。唯その時の土工の姿は、今でも良平の頭の何処かに、はっきりした記憶を残している。薄明りの中に仄めいた、小さい黄色...
良平は全身で何を押すようにしましたか。
良平は全身でトロッコを押すようにしました。
JCRRAG_011013
国語
「さあ、もう一度押すじゃあ」  良平は年下の二人と一しょに、又トロッコを押し上げにかかった。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼等の後には、誰かの足音が聞え出した。のみならずそれは聞え出したと思うと、急にこう云う怒鳴り声に変った。 「この野郎! 誰に断ってトロに触った?」  其処には古い印袢天に、季節外れの麦藁帽をかぶった、背の高い土工が佇んでいる。そう云う姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一しょに、もう五六間逃げ出していた。それぎり良平は使の帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。唯その時の土工の姿は、今でも良平の頭の何処かに、はっきりした記憶を残している。薄明りの中に仄めいた、小さい黄色...
良平は冷淡に何と云いましたか。
良平は冷淡に「難有う」と云いました。
JCRRAG_011014
国語
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。  むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。  その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。  或秋のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出...
ごんは、一人ぼっちの小狐で、どこに穴をほって住んでいましたか。
ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。
JCRRAG_011015
国語
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。  むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。  その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。  或秋のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出...
ごんは、どこまで出て来ましたか。
ごんは、村の小川の堤まで出て来ました。
JCRRAG_011016
国語
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。  むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。  その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。  或秋のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出...
ごんは、見つからないように、どこからじっとのぞいてみましたか。
ごんは、見つからないように、そうっと草の深いところへ歩きよって、そこからじっとのぞいてみました。
JCRRAG_011017
国語
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。  むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。  その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。  或秋のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出...
兵十はぼろぼろの黒いきものをまくし上げて、腰のところまで水にひたりながら、何をゆすぶっていましたか。
兵十はぼろぼろの黒いきものをまくし上げて、腰のところまで水にひたりながら、魚をとる、はりきりという、網をゆすぶっていました。
JCRRAG_011018
国語
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。  むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。  その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐」という狐がいました。ごんは、一人ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。  或秋のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間、ごんは、外へも出...
ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、何を口にくわえましたか。
ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、うなぎの頭を口にくわえました。
JCRRAG_011019
国語
十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。ごんは、 「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。 「何だろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」  こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。大きな鍋の中では、何かぐず...
ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、誰が、おはぐろをつけていましたか。
ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。
JCRRAG_011020
国語
十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。ごんは、 「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。 「何だろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」  こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。大きな鍋の中では、何かぐず...
小さな、こわれかけた家の中には、何があつまっていましたか。
小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。
JCRRAG_011021
国語
十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。ごんは、 「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。 「何だろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」  こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。大きな鍋の中では、何かぐず...
ごんは、村の墓地へ行って、何のかげにかくれていましたか。
ごんは、村の墓地へ行って、六地蔵さんのかげにかくれていました。
JCRRAG_011022
国語
十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。ごんは、 「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。 「何だろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」  こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。大きな鍋の中では、何かぐず...
ごんは、いつの間にか、どこの前へ来ましたか。
ごんは、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。
JCRRAG_011023
国語
十日ほどたって、ごんが、弥助というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内が、おはぐろをつけていました。鍛冶屋の新兵衛の家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。ごんは、 「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。 「何だろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ。それに第一、お宮にのぼりが立つはずだが」  こんなことを考えながらやって来ますと、いつの間にか、表に赤い井戸のある、兵十の家の前へ来ました。その小さな、こわれかけた家の中には、大勢の人があつまっていました。よそいきの着物を着て、腰に手拭をさげたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。大きな鍋の中では、何かぐず...
兵十は、白いかみしもをつけて、何をささげていますか。
兵十は、白いかみしもをつけて、位牌をささげています。
JCRRAG_011024
国語
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売は、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはい...
ごんは、何の方へ走っていきましたか。
ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。
JCRRAG_011025
国語
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売は、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはい...
ごんは、かごの中から、何をつかみ出して、もと来た方へかけだしましたか。
ごんは、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。
JCRRAG_011026
国語
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売は、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはい...
ごんは、何のつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いましたか。
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
JCRRAG_011027
国語
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売は、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはい...
兵十は今まで、どのようなくらしをしていましたか。
兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていました。
JCRRAG_011028
国語
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。 「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」  こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。  ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。 「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」  ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、 「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売は、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはい...
裏口からのぞいて見ますと、兵十は、何をしていましたか。
裏口からのぞいて見ますと、兵十は、午飯をたべかけて、茶椀をもったまま、ぼんやりと考えこんでいました。
JCRRAG_011029
国語
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。  ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というお百姓でした。 「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。 「ああん?」 「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」 「何が?」 「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」 「ふうん、だれが?」 「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」  ごんは...
ごんは、どこにかくれて、じっとしていましたか。
ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。
JCRRAG_011030
国語
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。  ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というお百姓でした。 「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。 「ああん?」 「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」 「何が?」 「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」 「ふうん、だれが?」 「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」  ごんは...
ごんは、何と思いながら井戸のそばにしゃがんでいましたか。
ごんは、「おねんぶつがあるんだな」と思いながら井戸のそばにしゃがんでいました。
JCRRAG_011031
国語
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。  ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というお百姓でした。 「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。 「ああん?」 「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」 「何が?」 「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」 「ふうん、だれが?」 「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」  ごんは...
ごんはびくっとして、どうしましたか。
ごんはびくっとして、小さくなってたちどまりました。
JCRRAG_011032
国語
月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。  ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というお百姓でした。 「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。 「ああん?」 「おれあ、このごろ、とてもふしぎなことがあるんだ」 「何が?」 「おっ母が死んでからは、だれだか知らんが、おれに栗やまつたけなんかを、まいにちまいにちくれるんだよ」 「ふうん、だれが?」 「それがわからんのだよ。おれの知らんうちに、おいていくんだ」  ごんは...
三人ほど、人がつれだってどこへはいっていきましたか。
三人ほど、人がつれだって吉兵衛の家へはいっていきました。
JCRRAG_011033
国語
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみいきました。  お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。 「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」 「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」 「そうかなあ」 「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」 「うん」  ごんは、へえ、こいつ...
ごんは、何がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいましたか。
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。
JCRRAG_011034
国語
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみいきました。  お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。 「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」 「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」 「そうかなあ」 「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」 「うん」  ごんは、へえ、こいつ...
ごんは、どのように思って、ついていきましたか。
ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。
JCRRAG_011035
国語
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみいきました。  お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。 「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」 「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」 「そうかなあ」 「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」 「うん」  ごんは、へえ、こいつ...
兵十はびっくりして何を見ましたか。
兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。
JCRRAG_011036
国語
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみいきました。  お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。 「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」 「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」 「そうかなあ」 「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」 「うん」  ごんは、へえ、こいつ...
ごんは、何をもって、兵十の家へ出かけましたか。
ごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。
JCRRAG_011037
国語
ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみいきました。  お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。 「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」 「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」 「そうかなあ」 「そうだとも。だから、まいにち神さまにお礼を言うがいいよ」 「うん」  ごんは、へえ、こいつ...
兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、何をつめましたか。
兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめました。
JCRRAG_011038
国語
村にはみるものがいくらでもあった。鍛冶屋、仕立屋、水車小屋、せんべや、樽屋。それから自転車屋など。それらはなんというすばらしい見物だったことだろう。それらの一つ一つが、半日立ちつくして見物していても、けっしてあかせないだけの魅力を持っていたのである。そしてまたなんどみてもそこで行なわれている細かい仕事はじゅうぶんわれわれを楽しませてくれたのである。  でだれでも子どもならば、鍛冶屋がどうして火をおこし、どうして鍬をうつか、仕立屋がどんなふうにミシンをまわし、どんな工合にエプロンのポケットをぬいつけるか、またせんべやのじいさんが、せんべをさしはさんだ、うちわようのものをどんな順序で火の上でひっくりかえすか細かいところまでよく知っていた...
おとなたちは、子どもをまるで何のように思っていますか。
おとなたちは、子どもをまるではえかなんぞのように思っています。
JCRRAG_011039
国語
村にはみるものがいくらでもあった。鍛冶屋、仕立屋、水車小屋、せんべや、樽屋。それから自転車屋など。それらはなんというすばらしい見物だったことだろう。それらの一つ一つが、半日立ちつくして見物していても、けっしてあかせないだけの魅力を持っていたのである。そしてまたなんどみてもそこで行なわれている細かい仕事はじゅうぶんわれわれを楽しませてくれたのである。  でだれでも子どもならば、鍛冶屋がどうして火をおこし、どうして鍬をうつか、仕立屋がどんなふうにミシンをまわし、どんな工合にエプロンのポケットをぬいつけるか、またせんべやのじいさんが、せんべをさしはさんだ、うちわようのものをどんな順序で火の上でひっくりかえすか細かいところまでよく知っていた...
子どもたちは手ぎわよく、どのように仕事をやってのけるだろうと思われますか。
子どもたちは手ぎわよく、一つとしてまちがいを起こさないで仕事をやってのけたことだろうと思われます。
JCRRAG_011040
国語
村にはみるものがいくらでもあった。鍛冶屋、仕立屋、水車小屋、せんべや、樽屋。それから自転車屋など。それらはなんというすばらしい見物だったことだろう。それらの一つ一つが、半日立ちつくして見物していても、けっしてあかせないだけの魅力を持っていたのである。そしてまたなんどみてもそこで行なわれている細かい仕事はじゅうぶんわれわれを楽しませてくれたのである。  でだれでも子どもならば、鍛冶屋がどうして火をおこし、どうして鍬をうつか、仕立屋がどんなふうにミシンをまわし、どんな工合にエプロンのポケットをぬいつけるか、またせんべやのじいさんが、せんべをさしはさんだ、うちわようのものをどんな順序で火の上でひっくりかえすか細かいところまでよく知っていた...
村には何がいくらでもありましたか。
村にはみるものがいくらでもありました。
JCRRAG_011041
国語
村にはみるものがいくらでもあった。鍛冶屋、仕立屋、水車小屋、せんべや、樽屋。それから自転車屋など。それらはなんというすばらしい見物だったことだろう。それらの一つ一つが、半日立ちつくして見物していても、けっしてあかせないだけの魅力を持っていたのである。そしてまたなんどみてもそこで行なわれている細かい仕事はじゅうぶんわれわれを楽しませてくれたのである。  でだれでも子どもならば、鍛冶屋がどうして火をおこし、どうして鍬をうつか、仕立屋がどんなふうにミシンをまわし、どんな工合にエプロンのポケットをぬいつけるか、またせんべやのじいさんが、せんべをさしはさんだ、うちわようのものをどんな順序で火の上でひっくりかえすか細かいところまでよく知っていた...
子どもたちが遊んでいる金槌をこっそりにぎったりすると、鍛冶屋のおやじは何にけわしいしわをつくっていうのでしたか。
子どもたちが遊んでいる金槌をこっそりにぎったりすると、鍛冶屋のおやじは油汗で黒く光っている額にけわしいしわをつくっていうのでした。
JCRRAG_011042
国語
村にはみるものがいくらでもあった。鍛冶屋、仕立屋、水車小屋、せんべや、樽屋。それから自転車屋など。それらはなんというすばらしい見物だったことだろう。それらの一つ一つが、半日立ちつくして見物していても、けっしてあかせないだけの魅力を持っていたのである。そしてまたなんどみてもそこで行なわれている細かい仕事はじゅうぶんわれわれを楽しませてくれたのである。  でだれでも子どもならば、鍛冶屋がどうして火をおこし、どうして鍬をうつか、仕立屋がどんなふうにミシンをまわし、どんな工合にエプロンのポケットをぬいつけるか、またせんべやのじいさんが、せんべをさしはさんだ、うちわようのものをどんな順序で火の上でひっくりかえすか細かいところまでよく知っていた...
子どもたちは、どのようなことをよく知っていましたか。
子どもたちは、鍛冶屋がどうして火をおこし、どうして鍬をうつか、仕立屋がどんなふうにミシンをまわし、どんな工合にエプロンのポケットをぬいつけるか、またせんべやのじいさんが、せんべをさしはさんだ、うちわようのものをどんな順序で火の上でひっくりかえすか細かいところまでよく知っていました。
JCRRAG_011043
国語
正九郎はつくづく思うのだった。――自転車のパンクなおしをはじめからしまいまでやってみたいなあと。自転車屋の戸口にしゃがんで、自転車のパンクしたところがつくろわれている工作をみていると、正九郎ののどはこくりと鳴るのだった。まるでうまいものを山ほどみせつけられたように。しかしそこの主人がどんなに気むずかしいおじさんであるか、正九郎はよく知っていた。彼は頭がはげていた。首が太くて、あまった肉が大きいしわをつくっていた。眉毛が針金のようにあらくて、いつもおこったような顔をしていた。そしてあまり口をきかなかったが、たまに口を開くと、かみつくように短いことばをうちつける。村の人たちは、あれで金さんはいい人だといっていた。が正九郎は獣のようにおそ...
主人はいつもどのような顔をしていましたか。
主人はいつもおこったような顔をしていました。
JCRRAG_011044
国語
正九郎はつくづく思うのだった。――自転車のパンクなおしをはじめからしまいまでやってみたいなあと。自転車屋の戸口にしゃがんで、自転車のパンクしたところがつくろわれている工作をみていると、正九郎ののどはこくりと鳴るのだった。まるでうまいものを山ほどみせつけられたように。しかしそこの主人がどんなに気むずかしいおじさんであるか、正九郎はよく知っていた。彼は頭がはげていた。首が太くて、あまった肉が大きいしわをつくっていた。眉毛が針金のようにあらくて、いつもおこったような顔をしていた。そしてあまり口をきかなかったが、たまに口を開くと、かみつくように短いことばをうちつける。村の人たちは、あれで金さんはいい人だといっていた。が正九郎は獣のようにおそ...
頭上から主人にどなられたとき、どのように正九郎はおじけてしまいましたか。
頭上から主人にどなられたとき、眼の前に雷が落ちてきたように正九郎はおじけてしまいました。
JCRRAG_011045
国語
正九郎はつくづく思うのだった。――自転車のパンクなおしをはじめからしまいまでやってみたいなあと。自転車屋の戸口にしゃがんで、自転車のパンクしたところがつくろわれている工作をみていると、正九郎ののどはこくりと鳴るのだった。まるでうまいものを山ほどみせつけられたように。しかしそこの主人がどんなに気むずかしいおじさんであるか、正九郎はよく知っていた。彼は頭がはげていた。首が太くて、あまった肉が大きいしわをつくっていた。眉毛が針金のようにあらくて、いつもおこったような顔をしていた。そしてあまり口をきかなかったが、たまに口を開くと、かみつくように短いことばをうちつける。村の人たちは、あれで金さんはいい人だといっていた。が正九郎は獣のようにおそ...
正九郎は学校から帰ってくると何にとりかえさせられましたか。
正九郎は学校から帰ってくるとあらいたての白ズボンにとりかえさせられました。
JCRRAG_011046
国語
正九郎はつくづく思うのだった。――自転車のパンクなおしをはじめからしまいまでやってみたいなあと。自転車屋の戸口にしゃがんで、自転車のパンクしたところがつくろわれている工作をみていると、正九郎ののどはこくりと鳴るのだった。まるでうまいものを山ほどみせつけられたように。しかしそこの主人がどんなに気むずかしいおじさんであるか、正九郎はよく知っていた。彼は頭がはげていた。首が太くて、あまった肉が大きいしわをつくっていた。眉毛が針金のようにあらくて、いつもおこったような顔をしていた。そしてあまり口をきかなかったが、たまに口を開くと、かみつくように短いことばをうちつける。村の人たちは、あれで金さんはいい人だといっていた。が正九郎は獣のようにおそ...
正九郎と加平は何のようにひそひそと話しましたか。
正九郎と加平はふたりの泥棒のようにひそひそと話しました。
JCRRAG_011047
国語
正九郎はつくづく思うのだった。――自転車のパンクなおしをはじめからしまいまでやってみたいなあと。自転車屋の戸口にしゃがんで、自転車のパンクしたところがつくろわれている工作をみていると、正九郎ののどはこくりと鳴るのだった。まるでうまいものを山ほどみせつけられたように。しかしそこの主人がどんなに気むずかしいおじさんであるか、正九郎はよく知っていた。彼は頭がはげていた。首が太くて、あまった肉が大きいしわをつくっていた。眉毛が針金のようにあらくて、いつもおこったような顔をしていた。そしてあまり口をきかなかったが、たまに口を開くと、かみつくように短いことばをうちつける。村の人たちは、あれで金さんはいい人だといっていた。が正九郎は獣のようにおそ...
正九郎と加平は戸口に面してたったとき、どこでしばらく躊躇しましたか。
正九郎と加平は戸口に面してたったとき、道のまん中でしばらく躊躇しました。
JCRRAG_011048
国語
さて子どもがふたりで自転車屋をあずかるというのはうれしいような、だが変てこなものだ。いったい何をしていたらいいのだろう。ふたりはだまって店にならんだものをみまわしてみる。ピカピカ光る新しい自転車。天井につるしてある古自転車の車体や車輪。棚にならんだ、美しい自転車油とゴムのりのかん。柱につるされたチェーンのたば。油と鉄さびでよごれた修繕台、道具箱等々。こんなものをみんなふたりがあずかったのだと思うと、胸がわくわくするのである。  ふたりはひっそりしていた。子どもを失った二羽のはとのように。こんなこと、はじめなければよかった。でもいまさらやめてしまうわけにもいかない。なあに、パンクくらいなおせるのだ。  それからどれだけ時間がすぎたろう...
ふたりはだまって何をみまわしてみましたか。
ふたりはだまって店にならんだものをみまわしてみました。
JCRRAG_011049
国語
さて子どもがふたりで自転車屋をあずかるというのはうれしいような、だが変てこなものだ。いったい何をしていたらいいのだろう。ふたりはだまって店にならんだものをみまわしてみる。ピカピカ光る新しい自転車。天井につるしてある古自転車の車体や車輪。棚にならんだ、美しい自転車油とゴムのりのかん。柱につるされたチェーンのたば。油と鉄さびでよごれた修繕台、道具箱等々。こんなものをみんなふたりがあずかったのだと思うと、胸がわくわくするのである。  ふたりはひっそりしていた。子どもを失った二羽のはとのように。こんなこと、はじめなければよかった。でもいまさらやめてしまうわけにもいかない。なあに、パンクくらいなおせるのだ。  それからどれだけ時間がすぎたろう...
加平は道に出ていって、南をみたり北をみたりして何を待つのでしたか。
加平は道に出ていって、南をみたり北をみたりして「パンクのくる」のを待つのでした。
JCRRAG_011050
国語
さて子どもがふたりで自転車屋をあずかるというのはうれしいような、だが変てこなものだ。いったい何をしていたらいいのだろう。ふたりはだまって店にならんだものをみまわしてみる。ピカピカ光る新しい自転車。天井につるしてある古自転車の車体や車輪。棚にならんだ、美しい自転車油とゴムのりのかん。柱につるされたチェーンのたば。油と鉄さびでよごれた修繕台、道具箱等々。こんなものをみんなふたりがあずかったのだと思うと、胸がわくわくするのである。  ふたりはひっそりしていた。子どもを失った二羽のはとのように。こんなこと、はじめなければよかった。でもいまさらやめてしまうわけにもいかない。なあに、パンクくらいなおせるのだ。  それからどれだけ時間がすぎたろう...
おじさんは、ふたりを何とまちがえましたか。
おじさんは、ふたりを自転車屋の子とまちがえました。
JCRRAG_011051
国語
さて子どもがふたりで自転車屋をあずかるというのはうれしいような、だが変てこなものだ。いったい何をしていたらいいのだろう。ふたりはだまって店にならんだものをみまわしてみる。ピカピカ光る新しい自転車。天井につるしてある古自転車の車体や車輪。棚にならんだ、美しい自転車油とゴムのりのかん。柱につるされたチェーンのたば。油と鉄さびでよごれた修繕台、道具箱等々。こんなものをみんなふたりがあずかったのだと思うと、胸がわくわくするのである。  ふたりはひっそりしていた。子どもを失った二羽のはとのように。こんなこと、はじめなければよかった。でもいまさらやめてしまうわけにもいかない。なあに、パンクくらいなおせるのだ。  それからどれだけ時間がすぎたろう...
ふたりはわくわくして何にとりかかりましたか。
ふたりはわくわくして修繕にとりかかりました。
JCRRAG_011052
国語
はじめのうちふたりはあまりわくわくしていたので、四つの手がぶっつきあってしかたがなかったが、そのうち本物の自転車屋の子どものようにすらすらとうまくやっていくことができた。だがむろん、正九郎のあらい立ての白ズボンがみるみる汚くなってゆくことはまぬがれなかった。よいことがあればすこしくらいはわるいこともがまんしなければならない。  だがこんなことになろうとは思っていなかった。修繕が終わって正九郎が空気ポンプでタイヤの中に空気を送っていたとき、急に空気の抵抗がなくなって、ポンプがきかなくなってしまったのだ。五六度おしたりひきあげたりしてみたが、水の中へ棒をさしこむようなものである。正九郎は加平と顔をみあわせた。たいへんなことをしてしまった...
正九郎の耳は、どのように、ざあざあと鳴りだしたのですか。
正九郎の耳は、中に波がおしよせたように、ざあざあと鳴りだしました。
JCRRAG_011053
国語
はじめのうちふたりはあまりわくわくしていたので、四つの手がぶっつきあってしかたがなかったが、そのうち本物の自転車屋の子どものようにすらすらとうまくやっていくことができた。だがむろん、正九郎のあらい立ての白ズボンがみるみる汚くなってゆくことはまぬがれなかった。よいことがあればすこしくらいはわるいこともがまんしなければならない。  だがこんなことになろうとは思っていなかった。修繕が終わって正九郎が空気ポンプでタイヤの中に空気を送っていたとき、急に空気の抵抗がなくなって、ポンプがきかなくなってしまったのだ。五六度おしたりひきあげたりしてみたが、水の中へ棒をさしこむようなものである。正九郎は加平と顔をみあわせた。たいへんなことをしてしまった...
ふたりは何に面と向かわねばならなりませんでしたか。
ふたりはポンプの破損という大きな壁のような罪に面と向かわねばなりませんでした。
JCRRAG_011054
国語
はじめのうちふたりはあまりわくわくしていたので、四つの手がぶっつきあってしかたがなかったが、そのうち本物の自転車屋の子どものようにすらすらとうまくやっていくことができた。だがむろん、正九郎のあらい立ての白ズボンがみるみる汚くなってゆくことはまぬがれなかった。よいことがあればすこしくらいはわるいこともがまんしなければならない。  だがこんなことになろうとは思っていなかった。修繕が終わって正九郎が空気ポンプでタイヤの中に空気を送っていたとき、急に空気の抵抗がなくなって、ポンプがきかなくなってしまったのだ。五六度おしたりひきあげたりしてみたが、水の中へ棒をさしこむようなものである。正九郎は加平と顔をみあわせた。たいへんなことをしてしまった...
正九郎はいまにも空気入れがひとりでに歩いてきて、何としゃべり出しやしまいかと思いましたか。
正九郎はいまにも空気入れがひとりでに歩いてきて、正九ンがぼくをこわしたとしゃべり出しやしまいかと思いました。
JCRRAG_011055
国語
はじめのうちふたりはあまりわくわくしていたので、四つの手がぶっつきあってしかたがなかったが、そのうち本物の自転車屋の子どものようにすらすらとうまくやっていくことができた。だがむろん、正九郎のあらい立ての白ズボンがみるみる汚くなってゆくことはまぬがれなかった。よいことがあればすこしくらいはわるいこともがまんしなければならない。  だがこんなことになろうとは思っていなかった。修繕が終わって正九郎が空気ポンプでタイヤの中に空気を送っていたとき、急に空気の抵抗がなくなって、ポンプがきかなくなってしまったのだ。五六度おしたりひきあげたりしてみたが、水の中へ棒をさしこむようなものである。正九郎は加平と顔をみあわせた。たいへんなことをしてしまった...
ふたりは、やあ公が十銭玉をいつもの手さげ金庫にちゃりんとほうりこんだのをしおに、どのような気持ちで店を出ましたか。
ふたりは、やあ公が十銭玉をいつもの手さげ金庫にちゃりんとほうりこんだのをしおに、にげ出すような気持ちで店を出ました。
JCRRAG_011056
国語
はじめのうちふたりはあまりわくわくしていたので、四つの手がぶっつきあってしかたがなかったが、そのうち本物の自転車屋の子どものようにすらすらとうまくやっていくことができた。だがむろん、正九郎のあらい立ての白ズボンがみるみる汚くなってゆくことはまぬがれなかった。よいことがあればすこしくらいはわるいこともがまんしなければならない。  だがこんなことになろうとは思っていなかった。修繕が終わって正九郎が空気ポンプでタイヤの中に空気を送っていたとき、急に空気の抵抗がなくなって、ポンプがきかなくなってしまったのだ。五六度おしたりひきあげたりしてみたが、水の中へ棒をさしこむようなものである。正九郎は加平と顔をみあわせた。たいへんなことをしてしまった...
ふたりは水からあがったばかりの仔猫のようにしょんぼりつっ立って、何をみましたか。
ふたりは水からあがったばかりの仔猫のようにしょんぼりつっ立って、もの悲しげに夕暮をみました。
JCRRAG_011057
国語
でもまだ終わってしまったのではない。どうすることもできない空気ポンプのことがある。空気ポンプはそのよく日もまたそのよく日も正九郎をおびやかした。村中の人がそのことを知っているような気がして、正九郎は人の顔を正視することができなかった。先生が朝礼台にのぼるたび、そのことをいい出しやしないかと、きもを冷やすのだった。自転車屋の方へなど足も向けなかった。空気入れからのがれるためなら、正九郎はいっそう煙のように消えてしまいたいほどだったのである。  しかしとうとうおそろしいことになってしまった。あのことがあってから一週間ばかりのちのある夕方、お母さんが正九郎にふろしきをわたしていったのだった。 「自転車屋へいってナ、卵を二十銭、買っといで。...
正九郎は勝手がちがってどのような気持ちでしたか。
正九郎は勝手がちがって変な気持ちでした。
JCRRAG_011058
国語
でもまだ終わってしまったのではない。どうすることもできない空気ポンプのことがある。空気ポンプはそのよく日もまたそのよく日も正九郎をおびやかした。村中の人がそのことを知っているような気がして、正九郎は人の顔を正視することができなかった。先生が朝礼台にのぼるたび、そのことをいい出しやしないかと、きもを冷やすのだった。自転車屋の方へなど足も向けなかった。空気入れからのがれるためなら、正九郎はいっそう煙のように消えてしまいたいほどだったのである。  しかしとうとうおそろしいことになってしまった。あのことがあってから一週間ばかりのちのある夕方、お母さんが正九郎にふろしきをわたしていったのだった。 「自転車屋へいってナ、卵を二十銭、買っといで。...
正九郎は顔からさあっと何がひいていくのを感じましたか。
正九郎は顔からさあっと血がひいていくのを感じました。
JCRRAG_011059
国語
でもまだ終わってしまったのではない。どうすることもできない空気ポンプのことがある。空気ポンプはそのよく日もまたそのよく日も正九郎をおびやかした。村中の人がそのことを知っているような気がして、正九郎は人の顔を正視することができなかった。先生が朝礼台にのぼるたび、そのことをいい出しやしないかと、きもを冷やすのだった。自転車屋の方へなど足も向けなかった。空気入れからのがれるためなら、正九郎はいっそう煙のように消えてしまいたいほどだったのである。  しかしとうとうおそろしいことになってしまった。あのことがあってから一週間ばかりのちのある夕方、お母さんが正九郎にふろしきをわたしていったのだった。 「自転車屋へいってナ、卵を二十銭、買っといで。...
正九郎はどのようなことを思いましたが、思ったきりでしたか。
正九郎は清太ンとこで買ってきてお母さんをごまかしたらどうだろうと思いましたが、思ったきりでした。
JCRRAG_011060
国語
でもまだ終わってしまったのではない。どうすることもできない空気ポンプのことがある。空気ポンプはそのよく日もまたそのよく日も正九郎をおびやかした。村中の人がそのことを知っているような気がして、正九郎は人の顔を正視することができなかった。先生が朝礼台にのぼるたび、そのことをいい出しやしないかと、きもを冷やすのだった。自転車屋の方へなど足も向けなかった。空気入れからのがれるためなら、正九郎はいっそう煙のように消えてしまいたいほどだったのである。  しかしとうとうおそろしいことになってしまった。あのことがあってから一週間ばかりのちのある夕方、お母さんが正九郎にふろしきをわたしていったのだった。 「自転車屋へいってナ、卵を二十銭、買っといで。...
正九郎は自首しに交番にはいってゆくすりのように、どこにはいっていきましたか。
正九郎は自首しに交番にはいってゆくすりのように、自転車屋にはいっていきました。
JCRRAG_011061
国語
おばさんが、前だれに卵を入れて持ってきた。そして正九郎のふろしきを畳の上にひろげて、そこへ前だれから移した。いつものおばさんとすこしもかわりはない。おばさんも知らないのだ。するとあの空気ポンプはどうなったのだろう。  正九郎は別段みたわけではない。だがはじめから空気ポンプがどこにあるか知っていた。さわってみなくてもはれもののあるところがわかるのと同じことである。ところが正九郎のそのはれものに、突如現われた闖入者が手をふれたのである。  正九郎はあっというひまもなかった。樽屋の次郎さんがつかつかとはいってきて、 「空気入れ、すまんがかしてや」 といったかと思うと、もう、空気ポンプをつかんで出ていったのである。正九郎ははれものの中に指を...
正九郎はどのようにぎょっとしましたか。
正九郎ははれものの中に指をつっこまれたようにぎょっとしました。
JCRRAG_011062
国語
おばさんが、前だれに卵を入れて持ってきた。そして正九郎のふろしきを畳の上にひろげて、そこへ前だれから移した。いつものおばさんとすこしもかわりはない。おばさんも知らないのだ。するとあの空気ポンプはどうなったのだろう。  正九郎は別段みたわけではない。だがはじめから空気ポンプがどこにあるか知っていた。さわってみなくてもはれもののあるところがわかるのと同じことである。ところが正九郎のそのはれものに、突如現われた闖入者が手をふれたのである。  正九郎はあっというひまもなかった。樽屋の次郎さんがつかつかとはいってきて、 「空気入れ、すまんがかしてや」 といったかと思うと、もう、空気ポンプをつかんで出ていったのである。正九郎ははれものの中に指を...
おばさんは、前だれに何を入れて持ってきました。
おばさんは、前だれに卵を入れて持ってきました。
JCRRAG_011063
国語
おばさんが、前だれに卵を入れて持ってきた。そして正九郎のふろしきを畳の上にひろげて、そこへ前だれから移した。いつものおばさんとすこしもかわりはない。おばさんも知らないのだ。するとあの空気ポンプはどうなったのだろう。  正九郎は別段みたわけではない。だがはじめから空気ポンプがどこにあるか知っていた。さわってみなくてもはれもののあるところがわかるのと同じことである。ところが正九郎のそのはれものに、突如現われた闖入者が手をふれたのである。  正九郎はあっというひまもなかった。樽屋の次郎さんがつかつかとはいってきて、 「空気入れ、すまんがかしてや」 といったかと思うと、もう、空気ポンプをつかんで出ていったのである。正九郎ははれものの中に指を...
正九郎は片手にふろしきづつみ、片手にうみたてのほろぬくい卵を持って通りに出ると、何を感じましたか。
正九郎は片手にふろしきづつみ、片手にうみたてのほろぬくい卵を持って通りに出ると、身も心もかるくなったのを感じました。
JCRRAG_011064
国語
おばさんが、前だれに卵を入れて持ってきた。そして正九郎のふろしきを畳の上にひろげて、そこへ前だれから移した。いつものおばさんとすこしもかわりはない。おばさんも知らないのだ。するとあの空気ポンプはどうなったのだろう。  正九郎は別段みたわけではない。だがはじめから空気ポンプがどこにあるか知っていた。さわってみなくてもはれもののあるところがわかるのと同じことである。ところが正九郎のそのはれものに、突如現われた闖入者が手をふれたのである。  正九郎はあっというひまもなかった。樽屋の次郎さんがつかつかとはいってきて、 「空気入れ、すまんがかしてや」 といったかと思うと、もう、空気ポンプをつかんで出ていったのである。正九郎ははれものの中に指を...
空気ポンプの音は、どのような音でしたか。
空気ポンプの音は、頑丈な男が、歯をくいしばってその歯のあいだから、ゆっくり息をおし出すような音でした。
JCRRAG_011065
国語
おばさんが、前だれに卵を入れて持ってきた。そして正九郎のふろしきを畳の上にひろげて、そこへ前だれから移した。いつものおばさんとすこしもかわりはない。おばさんも知らないのだ。するとあの空気ポンプはどうなったのだろう。  正九郎は別段みたわけではない。だがはじめから空気ポンプがどこにあるか知っていた。さわってみなくてもはれもののあるところがわかるのと同じことである。ところが正九郎のそのはれものに、突如現われた闖入者が手をふれたのである。  正九郎はあっというひまもなかった。樽屋の次郎さんがつかつかとはいってきて、 「空気入れ、すまんがかしてや」 といったかと思うと、もう、空気ポンプをつかんで出ていったのである。正九郎ははれものの中に指を...
正九郎はせんべやの前で突如かけ出し、どこまで一息に走って帰りましたか。
正九郎はせんべやの前で突如かけ出し、家まで一息に走って帰りました。
JCRRAG_011066
国語
「おい地獄さ行ぐんだで!」  二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹をすれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒臭かった。  赤い太鼓腹を巾広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から片袖をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ、南京虫のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が波とすれずれになび...
二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、何をしていたか。
二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。
JCRRAG_011067
国語
「おい地獄さ行ぐんだで!」  二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹をすれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒臭かった。  赤い太鼓腹を巾広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から片袖をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ、南京虫のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が波とすれずれになび...
漁夫は指元まで吸いつくした煙草をどうしたか。
漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。
JCRRAG_011068
国語
「おい地獄さ行ぐんだで!」  二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹をすれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒臭かった。  赤い太鼓腹を巾広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から片袖をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ、南京虫のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が波とすれずれになび...
巻煙草はどうなったか。
巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹をすれずれに落ちて行った。
JCRRAG_011069
国語
「おい地獄さ行ぐんだで!」  二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹をすれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒臭かった。  赤い太鼓腹を巾広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から片袖をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ、南京虫のように船と船の間をせわしく縫っているランチ、寒々とざわめいている油煙やパン屑や腐った果物の浮いている何か特別な織物のような波……。風の工合で煙が波とすれずれになび...
彼は身体一杯どんな臭いがしたか。
彼は身体一杯酒臭かった。
JCRRAG_011070
国語
薄暗い隅の方で、袢天を着、股引をはいた、風呂敷を三角にかぶった女出面らしい母親が、林檎の皮をむいて、棚に腹ん這いになっている子供に食わしてやっていた。子供の食うのを見ながら、自分では剥いたぐるぐるの輪になった皮を食っている。何かしゃべったり、子供のそばの小さい風呂敷包みを何度も解いたり、直してやっていた。そういうのが七、八人もいた。誰も送って来てくれるもののいない内地から来た子供達は、時々そっちの方をぬすみ見るように、見ていた。  髪や身体がセメントの粉まみれになっている女が、キャラメルの箱から二粒位ずつ、その附近の子供達に分けてやりながら、 「うちの健吉と仲良く働いてやってけれよ、な」と言っていた。木の根のように不恰好に大きいザラ...
薄暗い隅の方で、袢天を着、股引をはいた、風呂敷を三角にかぶった女出面らしい母親が、何をしていたか。
薄暗い隅の方で、袢天を着、股引をはいた、風呂敷を三角にかぶった女出面らしい母親が、林檎の皮をむいて、棚に腹ん這いになっている子供に食わしてやっていた。
JCRRAG_011071
国語
薄暗い隅の方で、袢天を着、股引をはいた、風呂敷を三角にかぶった女出面らしい母親が、林檎の皮をむいて、棚に腹ん這いになっている子供に食わしてやっていた。子供の食うのを見ながら、自分では剥いたぐるぐるの輪になった皮を食っている。何かしゃべったり、子供のそばの小さい風呂敷包みを何度も解いたり、直してやっていた。そういうのが七、八人もいた。誰も送って来てくれるもののいない内地から来た子供達は、時々そっちの方をぬすみ見るように、見ていた。  髪や身体がセメントの粉まみれになっている女が、キャラメルの箱から二粒位ずつ、その附近の子供達に分けてやりながら、 「うちの健吉と仲良く働いてやってけれよ、な」と言っていた。木の根のように不恰好に大きいザラ...
キャラメルの箱から二粒位ずつ、子供達に分けてやっていたのはどのような女ですか。
キャラメルの箱から二粒位ずつ、子供達に分けてやっていたのは髪や身体がセメントの粉まみれになっている女です。
JCRRAG_011072
国語
薄暗い中で、漁夫は豚のようにゴロゴロしていた。それに豚小屋そっくりの、胸がすぐゲエと来そうな臭いがしていた。 「臭せぇ、臭せぇ」 「そよ、俺だちだもの。ええ加減、こったら腐りかけた臭いでもすべよ」  赤い臼のような頭をした漁夫が、一升瓶そのままで、酒を端のかけた茶碗に注いで、鯣をムシャムシャやりながら飲んでいた。その横に仰向けにひっくり返って、林檎を食いながら、表紙のボロボロした講談雑誌を見ているのがいた。  四人輪になって飲んでいたのに、まだ飲み足りなかった一人が割り込んで行った。 「……んだべよ。四ヶ月も海の上だ。もう、これんかやれねべと思って……」  頑丈な身体をしていたが、そう言って、厚い下唇を時々癖のように嘗めながら眼を細...
赤い臼のような頭をした漁夫が何をしていたか。
赤い臼のような頭をした漁夫が、一升瓶そのままで、酒を端のかけた茶碗に注いで、鯣をムシャムシャやりながら飲んでいた。
JCRRAG_011073
国語
薄暗い中で、漁夫は豚のようにゴロゴロしていた。それに豚小屋そっくりの、胸がすぐゲエと来そうな臭いがしていた。 「臭せぇ、臭せぇ」 「そよ、俺だちだもの。ええ加減、こったら腐りかけた臭いでもすべよ」  赤い臼のような頭をした漁夫が、一升瓶そのままで、酒を端のかけた茶碗に注いで、鯣をムシャムシャやりながら飲んでいた。その横に仰向けにひっくり返って、林檎を食いながら、表紙のボロボロした講談雑誌を見ているのがいた。  四人輪になって飲んでいたのに、まだ飲み足りなかった一人が割り込んで行った。 「……んだべよ。四ヶ月も海の上だ。もう、これんかやれねべと思って……」  頑丈な身体をしていたが、そう言って、厚い下唇を時々癖のように嘗めながら眼を細...
四人輪になって飲んでいたのに、まだ飲み足りなかった一人が何をしたか。
四人輪になって飲んでいたのに、まだ飲み足りなかった一人が割り込んで行った。
JCRRAG_011074
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薄暗い中で、漁夫は豚のようにゴロゴロしていた。それに豚小屋そっくりの、胸がすぐゲエと来そうな臭いがしていた。 「臭せぇ、臭せぇ」 「そよ、俺だちだもの。ええ加減、こったら腐りかけた臭いでもすべよ」  赤い臼のような頭をした漁夫が、一升瓶そのままで、酒を端のかけた茶碗に注いで、鯣をムシャムシャやりながら飲んでいた。その横に仰向けにひっくり返って、林檎を食いながら、表紙のボロボロした講談雑誌を見ているのがいた。  四人輪になって飲んでいたのに、まだ飲み足りなかった一人が割り込んで行った。 「……んだべよ。四ヶ月も海の上だ。もう、これんかやれねべと思って……」  頑丈な身体をしていたが、そう言って、厚い下唇を時々癖のように嘗めながら眼を細...
白首のことを話した漁夫が何をしたか。
白首のことを話した漁夫が急に怒ったように言った。
JCRRAG_011075
国語
薄暗い中で、漁夫は豚のようにゴロゴロしていた。それに豚小屋そっくりの、胸がすぐゲエと来そうな臭いがしていた。 「臭せぇ、臭せぇ」 「そよ、俺だちだもの。ええ加減、こったら腐りかけた臭いでもすべよ」  赤い臼のような頭をした漁夫が、一升瓶そのままで、酒を端のかけた茶碗に注いで、鯣をムシャムシャやりながら飲んでいた。その横に仰向けにひっくり返って、林檎を食いながら、表紙のボロボロした講談雑誌を見ているのがいた。  四人輪になって飲んでいたのに、まだ飲み足りなかった一人が割り込んで行った。 「……んだべよ。四ヶ月も海の上だ。もう、これんかやれねべと思って……」  頑丈な身体をしていたが、そう言って、厚い下唇を時々癖のように嘗めながら眼を細...
相手は何をしたか。
相手はへへへへへと笑った。
JCRRAG_011076
国語
そこから少し離れた棚に、宿酔の青ぶくれにムクンだ顔をした、頭の前だけを長くした若い漁夫が、 「俺もう今度こそ船さ来ねえッて思ってたんだけれどもな」と大声で言っていた。「周旋屋に引っ張り廻されて、文無しになってよ。又、長げえことくたばるめに合わされるんだ」  こっちに背を見せている同じ処から来ているらしい男が、それに何かヒソヒソ言っていた。  ハッチの降口に始め鎌足を見せて、ゴロゴロする大きな昔風の信玄袋を担になった男が、梯子を下りてきた。床に立ってキョロキョロ見廻わしていたが、あいているのを見付けると、棚に上って来た。 「今日は」と言って、横の男に頭を下げた。顔が何かで染ったように、油じみて、黒かった。「仲間さ入れて貰えます」  後...
そこから少し離れた棚に、宿酔の青ぶくれにムクンだ顔をした、頭の前だけを長くした若い漁夫が何と言ったか。
そこから少し離れた棚に、宿酔の青ぶくれにムクンだ顔をした、頭の前だけを長くした若い漁夫が、「俺もう今度こそ船さ来ねえッて思ってたんだけれどもな」と大声で言っていた。
JCRRAG_011077
国語
そこから少し離れた棚に、宿酔の青ぶくれにムクンだ顔をした、頭の前だけを長くした若い漁夫が、 「俺もう今度こそ船さ来ねえッて思ってたんだけれどもな」と大声で言っていた。「周旋屋に引っ張り廻されて、文無しになってよ。又、長げえことくたばるめに合わされるんだ」  こっちに背を見せている同じ処から来ているらしい男が、それに何かヒソヒソ言っていた。  ハッチの降口に始め鎌足を見せて、ゴロゴロする大きな昔風の信玄袋を担になった男が、梯子を下りてきた。床に立ってキョロキョロ見廻わしていたが、あいているのを見付けると、棚に上って来た。 「今日は」と言って、横の男に頭を下げた。顔が何かで染ったように、油じみて、黒かった。「仲間さ入れて貰えます」  後...
監督や工夫が爆発が他へ及ばないように、坑道に何を作っていましたか。
監督や工夫が爆発が他へ及ばないように、坑道に壁を作っていました。
JCRRAG_011078
国語
そこから少し離れた棚に、宿酔の青ぶくれにムクンだ顔をした、頭の前だけを長くした若い漁夫が、 「俺もう今度こそ船さ来ねえッて思ってたんだけれどもな」と大声で言っていた。「周旋屋に引っ張り廻されて、文無しになってよ。又、長げえことくたばるめに合わされるんだ」  こっちに背を見せている同じ処から来ているらしい男が、それに何かヒソヒソ言っていた。  ハッチの降口に始め鎌足を見せて、ゴロゴロする大きな昔風の信玄袋を担になった男が、梯子を下りてきた。床に立ってキョロキョロ見廻わしていたが、あいているのを見付けると、棚に上って来た。 「今日は」と言って、横の男に頭を下げた。顔が何かで染ったように、油じみて、黒かった。「仲間さ入れて貰えます」  後...
ハッチの降口に始め鎌足を見せて、ゴロゴロする大きな昔風の信玄袋を担になった男が、何をしたか。
ハッチの降口に始め鎌足を見せて、ゴロゴロする大きな昔風の信玄袋を担になった男が、梯子を下りてきた。
JCRRAG_011079
国語
そこから少し離れた棚に、宿酔の青ぶくれにムクンだ顔をした、頭の前だけを長くした若い漁夫が、 「俺もう今度こそ船さ来ねえッて思ってたんだけれどもな」と大声で言っていた。「周旋屋に引っ張り廻されて、文無しになってよ。又、長げえことくたばるめに合わされるんだ」  こっちに背を見せている同じ処から来ているらしい男が、それに何かヒソヒソ言っていた。  ハッチの降口に始め鎌足を見せて、ゴロゴロする大きな昔風の信玄袋を担になった男が、梯子を下りてきた。床に立ってキョロキョロ見廻わしていたが、あいているのを見付けると、棚に上って来た。 「今日は」と言って、横の男に頭を下げた。顔が何かで染ったように、油じみて、黒かった。「仲間さ入れて貰えます」  後...
この男は、船へ来るすぐ前まで何をしていたか。
この男は、船へ来るすぐ前まで夕張炭坑に七年も坑夫をしていた。
JCRRAG_011080
国語
秋田、青森、岩手から来た「百姓の漁夫」のうちでは、大きく安坐をかいて、両手をはすがいに股に差しこんでムシッとしているのや、膝を抱えこんで柱によりかかりながら、無心に皆が酒を飲んでいるのや、勝手にしゃべり合っているのに聞き入っているのがある。朝暗いうちから畑に出て、それで食えないで、追い払われてくる者達だった。長男一人を残してそれでもまだ食えなかった女は工場の女工に、次男も三男も何処かへ出て働かなければならない。鍋で豆をえるために、余った人間はドシドシ土地からハネ飛ばされて、市に流れて出てきた。彼らはみんな「金を残して」内地に帰ることを考えている。然し働いてきて、一度陸を踏む、するとモチを踏みつけた小鳥のように、函館や小樽でバタバタや...
彼らは何を考えていたか。
彼らはみんな「金を残して」内地に帰ることを考えている。
JCRRAG_011081
国語
秋田、青森、岩手から来た「百姓の漁夫」のうちでは、大きく安坐をかいて、両手をはすがいに股に差しこんでムシッとしているのや、膝を抱えこんで柱によりかかりながら、無心に皆が酒を飲んでいるのや、勝手にしゃべり合っているのに聞き入っているのがある。朝暗いうちから畑に出て、それで食えないで、追い払われてくる者達だった。長男一人を残してそれでもまだ食えなかった女は工場の女工に、次男も三男も何処かへ出て働かなければならない。鍋で豆をえるために、余った人間はドシドシ土地からハネ飛ばされて、市に流れて出てきた。彼らはみんな「金を残して」内地に帰ることを考えている。然し働いてきて、一度陸を踏む、するとモチを踏みつけた小鳥のように、函館や小樽でバタバタや...
彼らは、身寄りのない雪の北海道で「越年」するために、自分の身体を手鼻位の値で「売らなければならない」彼らそれを何度繰りかえしても、次の年にはどうしていたか。
彼らは、身寄りのない雪の北海道で「越年」するために、自分の身体を手鼻位の値で「売らなければならない」彼らそれを何度繰りかえしても、出来の悪い子供のように、次の年には又平気で(?)同じことをやってのけた。
JCRRAG_011082
国語
秋田、青森、岩手から来た「百姓の漁夫」のうちでは、大きく安坐をかいて、両手をはすがいに股に差しこんでムシッとしているのや、膝を抱えこんで柱によりかかりながら、無心に皆が酒を飲んでいるのや、勝手にしゃべり合っているのに聞き入っているのがある。朝暗いうちから畑に出て、それで食えないで、追い払われてくる者達だった。長男一人を残してそれでもまだ食えなかった女は工場の女工に、次男も三男も何処かへ出て働かなければならない。鍋で豆をえるために、余った人間はドシドシ土地からハネ飛ばされて、市に流れて出てきた。彼らはみんな「金を残して」内地に帰ることを考えている。然し働いてきて、一度陸を踏む、するとモチを踏みつけた小鳥のように、函館や小樽でバタバタや...
皆は四方の棚の上下の寝床から身体を乗り出して、何をしたか。
皆は四方の棚の上下の寝床から身体を乗り出して、ひやかしたり、冗談を言った。
JCRRAG_011083
国語
秋田、青森、岩手から来た「百姓の漁夫」のうちでは、大きく安坐をかいて、両手をはすがいに股に差しこんでムシッとしているのや、膝を抱えこんで柱によりかかりながら、無心に皆が酒を飲んでいるのや、勝手にしゃべり合っているのに聞き入っているのがある。朝暗いうちから畑に出て、それで食えないで、追い払われてくる者達だった。長男一人を残してそれでもまだ食えなかった女は工場の女工に、次男も三男も何処かへ出て働かなければならない。鍋で豆をえるために、余った人間はドシドシ土地からハネ飛ばされて、市に流れて出てきた。彼らはみんな「金を残して」内地に帰ることを考えている。然し働いてきて、一度陸を踏む、するとモチを踏みつけた小鳥のように、函館や小樽でバタバタや...
秋田、青森、岩手から来た「百姓の漁夫」のうちでは、どのようなことがあるか。
秋田、青森、岩手から来た「百姓の漁夫」のうちでは、大きく安坐をかいて、両手をはすがいに股に差しこんでムシッとしているのや、膝を抱えこんで柱によりかかりながら、無心に皆が酒を飲んでいるのや、勝手にしゃべり合っているのに聞き入っているのがある。
JCRRAG_011084
国語
「お菓子めえか、ええ、ねっちゃよ?」 「あッ、もッちょこい!」沖売の女が頓狂な声を出して、ハネ上った。「人の尻さ手ばやったりして、いけすかない、この男!」  菓子で口をモグモグさせていた男が、皆の視線が自分に集まったことにテレて、ゲラゲラ笑った。 「この女子、可愛いな」  トイレから、片側の壁に片手をつきながら、危い足取りで帰ってきた酔払いが、通りすがりに、赤黒くプクンとしている女の頬ぺたをつッついた。 「何んだね」 「怒んなよ。――この女子ば抱いて寝てやるべよ」  そう言って、女におどけた恰好をした。皆が笑った。 「おい饅頭、饅頭!」  ずっと隅の方から誰かが大声で叫んでいた。 「ハアイ……」こんな処ではめずらしい女のよく通る澄ん...
沖売の女が頓狂な声を出して、どうなったか。
沖売の女が頓狂な声を出して、ハネ上った。
JCRRAG_011085
国語
「お菓子めえか、ええ、ねっちゃよ?」 「あッ、もッちょこい!」沖売の女が頓狂な声を出して、ハネ上った。「人の尻さ手ばやったりして、いけすかない、この男!」  菓子で口をモグモグさせていた男が、皆の視線が自分に集まったことにテレて、ゲラゲラ笑った。 「この女子、可愛いな」  トイレから、片側の壁に片手をつきながら、危い足取りで帰ってきた酔払いが、通りすがりに、赤黒くプクンとしている女の頬ぺたをつッついた。 「何んだね」 「怒んなよ。――この女子ば抱いて寝てやるべよ」  そう言って、女におどけた恰好をした。皆が笑った。 「おい饅頭、饅頭!」  ずっと隅の方から誰かが大声で叫んでいた。 「ハアイ……」こんな処ではめずらしい女のよく通る澄ん...
菓子で口をモグモグさせていた男が、皆の視線が自分に集まったことにテレて、どのような行動をとったか。
菓子で口をモグモグさせていた男が、皆の視線が自分に集まったことにテレて、ゲラゲラ笑った。
JCRRAG_011086
国語
「お菓子めえか、ええ、ねっちゃよ?」 「あッ、もッちょこい!」沖売の女が頓狂な声を出して、ハネ上った。「人の尻さ手ばやったりして、いけすかない、この男!」  菓子で口をモグモグさせていた男が、皆の視線が自分に集まったことにテレて、ゲラゲラ笑った。 「この女子、可愛いな」  トイレから、片側の壁に片手をつきながら、危い足取りで帰ってきた酔払いが、通りすがりに、赤黒くプクンとしている女の頬ぺたをつッついた。 「何んだね」 「怒んなよ。――この女子ば抱いて寝てやるべよ」  そう言って、女におどけた恰好をした。皆が笑った。 「おい饅頭、饅頭!」  ずっと隅の方から誰かが大声で叫んでいた。 「ハアイ……」こんな処ではめずらしい女のよく通る澄ん...
トイレから、片側の壁に片手をつきながら、危い足取りで帰ってきた酔払いが、何をしたか。
トイレから、片側の壁に片手をつきながら、危い足取りで帰ってきた酔払いが、通りすがりに、赤黒くプクンとしている女の頬ぺたをつッついた。
JCRRAG_011087
国語
「お菓子めえか、ええ、ねっちゃよ?」 「あッ、もッちょこい!」沖売の女が頓狂な声を出して、ハネ上った。「人の尻さ手ばやったりして、いけすかない、この男!」  菓子で口をモグモグさせていた男が、皆の視線が自分に集まったことにテレて、ゲラゲラ笑った。 「この女子、可愛いな」  トイレから、片側の壁に片手をつきながら、危い足取りで帰ってきた酔払いが、通りすがりに、赤黒くプクンとしている女の頬ぺたをつッついた。 「何んだね」 「怒んなよ。――この女子ば抱いて寝てやるべよ」  そう言って、女におどけた恰好をした。皆が笑った。 「おい饅頭、饅頭!」  ずっと隅の方から誰かが大声で叫んでいた。 「ハアイ……」こんな処ではめずらしい女のよく通る澄ん...
その男は冬の間は何の会社の職工だったか。
その男は冬の間はゴム靴会社の職工だった。
JCRRAG_011088
国語
糊のついた真白い、上衣の丈の短い服を着た給仕が、「とも」のサロンに、ビール、果物、洋酒のコップを持って、忙しく往き来していた。サロンには、「会社のオッかない人、船長、監督、それにカムサツカで警備の任に当る駆逐艦の御大、水上警察の署長さん、海員組合の折鞄」がいた。 「畜生、ガブガブ飲むったら、ありゃしない」給仕はふくれかえっていた。  漁夫の「穴」に、浜なすのような電気がついた。煙草の煙や人いきれで、空気が濁って、臭く、穴全体がそのまま「糞壺」だった。区切られた寝床でゴロゴロしている人間が、蛆虫のようにうごめいて見えた。漁業監督を先頭に、船長、工場代表、雑夫長がハッチを下りて入って来た。船長は先のハネ上っている髭を気にして、始終ハンカ...
糊のついた真白い、上衣の丈の短い服を着た給仕が、何をしていたか。
糊のついた真白い、上衣の丈の短い服を着た給仕が、「とも」のサロンに、ビール、果物、洋酒のコップを持って、忙しく往き来していた。
JCRRAG_011089
国語
糊のついた真白い、上衣の丈の短い服を着た給仕が、「とも」のサロンに、ビール、果物、洋酒のコップを持って、忙しく往き来していた。サロンには、「会社のオッかない人、船長、監督、それにカムサツカで警備の任に当る駆逐艦の御大、水上警察の署長さん、海員組合の折鞄」がいた。 「畜生、ガブガブ飲むったら、ありゃしない」給仕はふくれかえっていた。  漁夫の「穴」に、浜なすのような電気がついた。煙草の煙や人いきれで、空気が濁って、臭く、穴全体がそのまま「糞壺」だった。区切られた寝床でゴロゴロしている人間が、蛆虫のようにうごめいて見えた。漁業監督を先頭に、船長、工場代表、雑夫長がハッチを下りて入って来た。船長は先のハネ上っている髭を気にして、始終ハンカ...
煙草の煙や人いきれで、空気が濁って、臭く、穴全体がどのような状態だったか。
煙草の煙や人いきれで、空気が濁って、臭く、穴全体がそのまま「糞壺」だった。
JCRRAG_011090
国語
糊のついた真白い、上衣の丈の短い服を着た給仕が、「とも」のサロンに、ビール、果物、洋酒のコップを持って、忙しく往き来していた。サロンには、「会社のオッかない人、船長、監督、それにカムサツカで警備の任に当る駆逐艦の御大、水上警察の署長さん、海員組合の折鞄」がいた。 「畜生、ガブガブ飲むったら、ありゃしない」給仕はふくれかえっていた。  漁夫の「穴」に、浜なすのような電気がついた。煙草の煙や人いきれで、空気が濁って、臭く、穴全体がそのまま「糞壺」だった。区切られた寝床でゴロゴロしている人間が、蛆虫のようにうごめいて見えた。漁業監督を先頭に、船長、工場代表、雑夫長がハッチを下りて入って来た。船長は先のハネ上っている髭を気にして、始終ハンカ...
区切られた寝床でゴロゴロしている人間が、どのように見えたか。
区切られた寝床でゴロゴロしている人間が、蛆虫のようにうごめいて見えた。
JCRRAG_011091
国語
糊のついた真白い、上衣の丈の短い服を着た給仕が、「とも」のサロンに、ビール、果物、洋酒のコップを持って、忙しく往き来していた。サロンには、「会社のオッかない人、船長、監督、それにカムサツカで警備の任に当る駆逐艦の御大、水上警察の署長さん、海員組合の折鞄」がいた。 「畜生、ガブガブ飲むったら、ありゃしない」給仕はふくれかえっていた。  漁夫の「穴」に、浜なすのような電気がついた。煙草の煙や人いきれで、空気が濁って、臭く、穴全体がそのまま「糞壺」だった。区切られた寝床でゴロゴロしている人間が、蛆虫のようにうごめいて見えた。漁業監督を先頭に、船長、工場代表、雑夫長がハッチを下りて入って来た。船長は先のハネ上っている髭を気にして、始終ハンカ...
監督はじろりとそれを見ながら、何をしたか。
監督はじろりとそれを見ながら、無遠慮に唾をはいた。
JCRRAG_011092
国語
祝津の燈台が、廻転する度にキラッキラッと光るのが、ずっと遠い右手に、一面灰色の海のような海霧の中から見えた。それが他方へ廻転してゆくとき、何か神秘的に、長く、遠く白銀色の光茫を何海浬もサッと引いた。 留萌の沖あたりから、細い、ジュクジュクした雨が降り出してきた。漁夫や雑夫は蟹の鋏のようにかじかんだ手を時々はすがいに懐の中につッこんだり、口のあたりを両手で円るく囲んで、ハアーと息をかけたりして働かなければならなかった。納豆の糸のような雨がしきりなしに、それと同じ色の不透明な海に降った。が、稚内に近くなるに従って、雨が粒々になって来、広い海の面が旗でもなびくように、うねりが出て来て、そして又それが細かく、せわしなくなった。風がマストに当...
漁夫や雑夫はどのように働かなければならなかったか。
漁夫や雑夫は蟹の鋏のようにかじかんだ手を時々はすがいに懐の中につッこんだり、口のあたりを両手で円るく囲んで、ハアーと息をかけたりして働かなければならなかった。
JCRRAG_011093
国語
祝津の燈台が、廻転する度にキラッキラッと光るのが、ずっと遠い右手に、一面灰色の海のような海霧の中から見えた。それが他方へ廻転してゆくとき、何か神秘的に、長く、遠く白銀色の光茫を何海浬もサッと引いた。 留萌の沖あたりから、細い、ジュクジュクした雨が降り出してきた。漁夫や雑夫は蟹の鋏のようにかじかんだ手を時々はすがいに懐の中につッこんだり、口のあたりを両手で円るく囲んで、ハアーと息をかけたりして働かなければならなかった。納豆の糸のような雨がしきりなしに、それと同じ色の不透明な海に降った。が、稚内に近くなるに従って、雨が粒々になって来、広い海の面が旗でもなびくように、うねりが出て来て、そして又それが細かく、せわしなくなった。風がマストに当...
風がマストに当たると何が起きたか。
風がマストに当たると不吉に鳴った。
JCRRAG_011094
国語
祝津の燈台が、廻転する度にキラッキラッと光るのが、ずっと遠い右手に、一面灰色の海のような海霧の中から見えた。それが他方へ廻転してゆくとき、何か神秘的に、長く、遠く白銀色の光茫を何海浬もサッと引いた。 留萌の沖あたりから、細い、ジュクジュクした雨が降り出してきた。漁夫や雑夫は蟹の鋏のようにかじかんだ手を時々はすがいに懐の中につッこんだり、口のあたりを両手で円るく囲んで、ハアーと息をかけたりして働かなければならなかった。納豆の糸のような雨がしきりなしに、それと同じ色の不透明な海に降った。が、稚内に近くなるに従って、雨が粒々になって来、広い海の面が旗でもなびくように、うねりが出て来て、そして又それが細かく、せわしなくなった。風がマストに当...
雑夫は黄色になえて、船酔らしく眼だけとんがらせて、何をしていたか。
雑夫は黄色になえて、船酔らしく眼だけとんがらせて、ゲエ、ゲエしていた。
JCRRAG_011095
国語
祝津の燈台が、廻転する度にキラッキラッと光るのが、ずっと遠い右手に、一面灰色の海のような海霧の中から見えた。それが他方へ廻転してゆくとき、何か神秘的に、長く、遠く白銀色の光茫を何海浬もサッと引いた。 留萌の沖あたりから、細い、ジュクジュクした雨が降り出してきた。漁夫や雑夫は蟹の鋏のようにかじかんだ手を時々はすがいに懐の中につッこんだり、口のあたりを両手で円るく囲んで、ハアーと息をかけたりして働かなければならなかった。納豆の糸のような雨がしきりなしに、それと同じ色の不透明な海に降った。が、稚内に近くなるに従って、雨が粒々になって来、広い海の面が旗でもなびくように、うねりが出て来て、そして又それが細かく、せわしなくなった。風がマストに当...
船は時々どのように身体を揺らしたか。
船は時々子供がするように、身体を揺らした。
JCRRAG_011096
国語
風は益々強くなってくるばかりだった。二本のマストは釣竿のようにたわんで、ビュウビュウ泣き出した。波は丸太棒の上でも一またぎする位の無雑作で、船の片側から他の側へ暴力団のようにあばれ込んできて、流れ出て行った。その瞬間、出口がザァーと滝になった。 見る見るもり上った山の、恐ろしく大きな斜面に玩具の船程に、ちょこんと横にのることがあった。と、船はのめったように、ドッ、ドッと、その谷底へ落ち込んでゆく。今にも、沈む!が、谷底にはすぐ別の波がむくむくと起ち上ってきて、ドシンと船の横腹と体当たりをする。 オホーツク海へ出ると、海の色がハッキリもっと灰色がかって来た。着物の上からゾクゾクと寒さが刺し込んできて、雑夫は皆唇をブシ色にして仕事をした...
二本のマストは釣竿のようにたわんで、どのように泣き出したか。
二本のマストは釣竿のようにたわんで、ビュウビュウ泣き出した。
JCRRAG_011097
国語
風は益々強くなってくるばかりだった。二本のマストは釣竿のようにたわんで、ビュウビュウ泣き出した。波は丸太棒の上でも一またぎする位の無雑作で、船の片側から他の側へ暴力団のようにあばれ込んできて、流れ出て行った。その瞬間、出口がザァーと滝になった。 見る見るもり上った山の、恐ろしく大きな斜面に玩具の船程に、ちょこんと横にのることがあった。と、船はのめったように、ドッ、ドッと、その谷底へ落ち込んでゆく。今にも、沈む!が、谷底にはすぐ別の波がむくむくと起ち上ってきて、ドシンと船の横腹と体当たりをする。 オホーツク海へ出ると、海の色がハッキリもっと灰色がかって来た。着物の上からゾクゾクと寒さが刺し込んできて、雑夫は皆唇をブシ色にして仕事をした...
オホーツク海へ出ると、海の色がどのようになったか。
オホーツク海へ出ると、海の色がハッキリもっと灰色がかって来た。
JCRRAG_011098
国語
風は益々強くなってくるばかりだった。二本のマストは釣竿のようにたわんで、ビュウビュウ泣き出した。波は丸太棒の上でも一またぎする位の無雑作で、船の片側から他の側へ暴力団のようにあばれ込んできて、流れ出て行った。その瞬間、出口がザァーと滝になった。 見る見るもり上った山の、恐ろしく大きな斜面に玩具の船程に、ちょこんと横にのることがあった。と、船はのめったように、ドッ、ドッと、その谷底へ落ち込んでゆく。今にも、沈む!が、谷底にはすぐ別の波がむくむくと起ち上ってきて、ドシンと船の横腹と体当たりをする。 オホーツク海へ出ると、海の色がハッキリもっと灰色がかって来た。着物の上からゾクゾクと寒さが刺し込んできて、雑夫は皆唇をブシ色にして仕事をした...
皆はデッキからデッキへロープを張りどのようにして作業をしなければならなかったか。
皆はデッキからデッキへロープを張り、それに各自がおしめのようにブラ下がり、作業をしなければならなかった。
JCRRAG_011099
国語
風は益々強くなってくるばかりだった。二本のマストは釣竿のようにたわんで、ビュウビュウ泣き出した。波は丸太棒の上でも一またぎする位の無雑作で、船の片側から他の側へ暴力団のようにあばれ込んできて、流れ出て行った。その瞬間、出口がザァーと滝になった。 見る見るもり上った山の、恐ろしく大きな斜面に玩具の船程に、ちょこんと横にのることがあった。と、船はのめったように、ドッ、ドッと、その谷底へ落ち込んでゆく。今にも、沈む!が、谷底にはすぐ別の波がむくむくと起ち上ってきて、ドシンと船の横腹と体当たりをする。 オホーツク海へ出ると、海の色がハッキリもっと灰色がかって来た。着物の上からゾクゾクと寒さが刺し込んできて、雑夫は皆唇をブシ色にして仕事をした...
監督は鮭殺しの棍棒をもって、どのような行動をとったか。
監督は鮭殺しの棍棒をもって、大声で怒鳴り散らした。
JCRRAG_011100
国語
蟹工船には川崎船を八隻のせていた。船員も漁夫もそれを何千匹の鱶のように、白い歯をむいてくる波にもぎ取られないように、縛りつけるために、自分等の命を「安々」と賭けなければならなかった。「貴様等の一人、二人が何なんだ。川崎一艘取られてみろ、たまったもんでないんだ」監督は日本語でハッキリそういった。 カムサツカの海は、よくも来やがった、と待ちかまえていたように見えた。ガツ、ガツに飢えている獅子のように、えどなみかかってきた。船はまるで兎より、もっと弱々しかった。空一面の吹雪は、風の工合で、白い大きな旗がなびくように見えた。夜が近くなってきた。しかし時化は止みそうもなかった。 仕事が終ると、皆は「糞壺」の中へ順々に入り込んできた。手や足は大...
蟹工船には川崎船を何隻のせていたか。
蟹工船には川崎船を八隻のせていた。