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JCRRAG_010701
国語
帆村荘六のミミ族研究は、ある程度の成功をおさめた。ミミ族の正体は、まず大体のことがわかった。またミミ族が、空気の中での戦闘に得意でないこと、ことに宇宙線からエネルギーを吸って生きている関係上、地底だとか、宇宙線遮蔽檻のように、宇宙線に乏しいところではすっかり元気がなくなってしまうこと、また音響砲のような、超音波を加えられると震動がとまって墜落し、そして地球人類に見えるようになることなどの弱点がわかった。しかしミミ族が、一体どこの天空からやってきたものか、それはわからなかった。またあの赤色金属藻の実質が、どういう性質のものであるかもわからなかった。  その間に、左倉少佐のひきいる第一宇宙戦隊は、活発な行動をとりはじめた。この戦隊は、噴...
帆村荘六のミミ族研究は、どのような結果だったか。
帆村荘六のミミ族研究は、ある程度の成功をおさめた。
JCRRAG_010702
国語
帆村荘六のミミ族研究は、ある程度の成功をおさめた。ミミ族の正体は、まず大体のことがわかった。またミミ族が、空気の中での戦闘に得意でないこと、ことに宇宙線からエネルギーを吸って生きている関係上、地底だとか、宇宙線遮蔽檻のように、宇宙線に乏しいところではすっかり元気がなくなってしまうこと、また音響砲のような、超音波を加えられると震動がとまって墜落し、そして地球人類に見えるようになることなどの弱点がわかった。しかしミミ族が、一体どこの天空からやってきたものか、それはわからなかった。またあの赤色金属藻の実質が、どういう性質のものであるかもわからなかった。  その間に、左倉少佐のひきいる第一宇宙戦隊は、活発な行動をとりはじめた。この戦隊は、噴...
司令左倉少佐は、宇宙戦隊の準備が完了すると、ミミ族にどのような申し入れを行ったか。
司令左倉少佐は、宇宙戦隊の準備が完了すると、ミミ族にたいして強硬な申し入れを行った。
JCRRAG_010703
国語
帆村荘六のミミ族研究は、ある程度の成功をおさめた。ミミ族の正体は、まず大体のことがわかった。またミミ族が、空気の中での戦闘に得意でないこと、ことに宇宙線からエネルギーを吸って生きている関係上、地底だとか、宇宙線遮蔽檻のように、宇宙線に乏しいところではすっかり元気がなくなってしまうこと、また音響砲のような、超音波を加えられると震動がとまって墜落し、そして地球人類に見えるようになることなどの弱点がわかった。しかしミミ族が、一体どこの天空からやってきたものか、それはわからなかった。またあの赤色金属藻の実質が、どういう性質のものであるかもわからなかった。  その間に、左倉少佐のひきいる第一宇宙戦隊は、活発な行動をとりはじめた。この戦隊は、噴...
この戦隊は、噴射艇五百隻でもって、何万哩を航続する力を持っていたか。
この戦隊は、噴射艇五百隻でもって、約二百万哩を航続する力を持っていた。
JCRRAG_010704
国語
帆村荘六のミミ族研究は、ある程度の成功をおさめた。ミミ族の正体は、まず大体のことがわかった。またミミ族が、空気の中での戦闘に得意でないこと、ことに宇宙線からエネルギーを吸って生きている関係上、地底だとか、宇宙線遮蔽檻のように、宇宙線に乏しいところではすっかり元気がなくなってしまうこと、また音響砲のような、超音波を加えられると震動がとまって墜落し、そして地球人類に見えるようになることなどの弱点がわかった。しかしミミ族が、一体どこの天空からやってきたものか、それはわからなかった。またあの赤色金属藻の実質が、どういう性質のものであるかもわからなかった。  その間に、左倉少佐のひきいる第一宇宙戦隊は、活発な行動をとりはじめた。この戦隊は、噴...
赤色金属藻の実質が、どのような性質のものかわかったか。
赤色金属藻の実質が、どういう性質のものであるかもわからなかった。
JCRRAG_010705
国語
帆村荘六のミミ族研究は、ある程度の成功をおさめた。ミミ族の正体は、まず大体のことがわかった。またミミ族が、空気の中での戦闘に得意でないこと、ことに宇宙線からエネルギーを吸って生きている関係上、地底だとか、宇宙線遮蔽檻のように、宇宙線に乏しいところではすっかり元気がなくなってしまうこと、また音響砲のような、超音波を加えられると震動がとまって墜落し、そして地球人類に見えるようになることなどの弱点がわかった。しかしミミ族が、一体どこの天空からやってきたものか、それはわからなかった。またあの赤色金属藻の実質が、どういう性質のものであるかもわからなかった。  その間に、左倉少佐のひきいる第一宇宙戦隊は、活発な行動をとりはじめた。この戦隊は、噴...
左倉少佐は、どのようにして敵にたいして無言の圧力を加えたか。
左倉少佐は、宇宙戦隊をひきいて、天空にうるさいほど浮揚している、およそ百箇に近い「魔の空間」の間を、ゆうゆうとぬって廻り、敵にたいして無言の圧力を加えた。
JCRRAG_010706
国語
「竜造寺兵曹長。これはへんだな」と、山岸中尉がいった。この若い士官は、鉱山の山岸少年の兄だった。 「山岸中尉も、歩けなくなりましたか。どうしたんでしょうか」  竜造寺兵曹長は、陽やけした黒い顔の中から、大きな目をむく。 「へんだなあ。まるで飛行機で急上昇飛行を始めると、G(万有引力のこと)が下向きにかかるが、あれと同じようだな」 「そうですなあ。あれとよく似ていますねえ。おや、前へ出ようとすると、Gが強くなりますよ」 「そうか。なるほど、その通りだ。どうしたんだろう。おや、前に何かあるぞ。手にさわるものがある。柔らかいものだ。しかしさっぱり目に見えない」  山岸中尉はついに手さぐりで、怪物の存在を見つけた。何物ともしれず、ぐにゃりと...
山岸中尉はなにを見つけたか。
山岸中尉はついに手さぐりで、怪物の存在を見つけた。
JCRRAG_010707
国語
「竜造寺兵曹長。これはへんだな」と、山岸中尉がいった。この若い士官は、鉱山の山岸少年の兄だった。 「山岸中尉も、歩けなくなりましたか。どうしたんでしょうか」  竜造寺兵曹長は、陽やけした黒い顔の中から、大きな目をむく。 「へんだなあ。まるで飛行機で急上昇飛行を始めると、G(万有引力のこと)が下向きにかかるが、あれと同じようだな」 「そうですなあ。あれとよく似ていますねえ。おや、前へ出ようとすると、Gが強くなりますよ」 「そうか。なるほど、その通りだ。どうしたんだろう。おや、前に何かあるぞ。手にさわるものがある。柔らかいものだ。しかしさっぱり目に見えない」  山岸中尉はついに手さぐりで、怪物の存在を見つけた。何物ともしれず、ぐにゃりと...
帆村荘六がこの話を耳にしたのは、いつか。
この話は、帆村荘六の耳にもはいった。彼がそれを聞いたのは、正午のすこし前であった。
JCRRAG_010708
国語
「竜造寺兵曹長。これはへんだな」と、山岸中尉がいった。この若い士官は、鉱山の山岸少年の兄だった。 「山岸中尉も、歩けなくなりましたか。どうしたんでしょうか」  竜造寺兵曹長は、陽やけした黒い顔の中から、大きな目をむく。 「へんだなあ。まるで飛行機で急上昇飛行を始めると、G(万有引力のこと)が下向きにかかるが、あれと同じようだな」 「そうですなあ。あれとよく似ていますねえ。おや、前へ出ようとすると、Gが強くなりますよ」 「そうか。なるほど、その通りだ。どうしたんだろう。おや、前に何かあるぞ。手にさわるものがある。柔らかいものだ。しかしさっぱり目に見えない」  山岸中尉はついに手さぐりで、怪物の存在を見つけた。何物ともしれず、ぐにゃりと...
帆村荘六がこの話を聞いたときどのような反応をしたか。
帆村はこの話を聞くと、さっと顔色をかえた。
JCRRAG_010709
国語
「はははは。帆村君。君もすこし体をやすめてはどうかね。この間から、ずいぶん心身を疲らせているようだから、君まで神経衰弱になっては困るよ」  特別刑事調査隊長の室戸博士は、白い髭をひっぱって、帆村荘六をじろりと見た。帆村が「白根村事件こそは、恐るべき怪物が、われわれにたいして発した第二の警報だ」という意味のことをいったので、そういう突拍子もないことをいうのは、帆村荘六自身がもう神経衰弱になっているのではないかと思ったのだ。  帆村は室戸博士の言葉を、悪い方へ解釈しなかった。彼はていねいに礼をのべた。それからポケットへ手を入れると、何か紙に包んだものを取出した。それを開けると、中には緑色がかったねじの頭のようなものが、三つ四つはいってい...
特別刑事調査隊長の室戸博士は、なにをしながら帆村を見たか。
特別刑事調査隊長の室戸博士は、白い髭をひっぱって、帆村荘六をじろりと見た。
JCRRAG_010710
国語
「はははは。帆村君。君もすこし体をやすめてはどうかね。この間から、ずいぶん心身を疲らせているようだから、君まで神経衰弱になっては困るよ」  特別刑事調査隊長の室戸博士は、白い髭をひっぱって、帆村荘六をじろりと見た。帆村が「白根村事件こそは、恐るべき怪物が、われわれにたいして発した第二の警報だ」という意味のことをいったので、そういう突拍子もないことをいうのは、帆村荘六自身がもう神経衰弱になっているのではないかと思ったのだ。  帆村は室戸博士の言葉を、悪い方へ解釈しなかった。彼はていねいに礼をのべた。それからポケットへ手を入れると、何か紙に包んだものを取出した。それを開けると、中には緑色がかったねじの頭のようなものが、三つ四つはいってい...
帆村は室戸博士の言葉をどのように解釈したか。
帆村は室戸博士の言葉を、悪い方へ解釈しなかった。
JCRRAG_010711
国語
「はははは。帆村君。君もすこし体をやすめてはどうかね。この間から、ずいぶん心身を疲らせているようだから、君まで神経衰弱になっては困るよ」  特別刑事調査隊長の室戸博士は、白い髭をひっぱって、帆村荘六をじろりと見た。帆村が「白根村事件こそは、恐るべき怪物が、われわれにたいして発した第二の警報だ」という意味のことをいったので、そういう突拍子もないことをいうのは、帆村荘六自身がもう神経衰弱になっているのではないかと思ったのだ。  帆村は室戸博士の言葉を、悪い方へ解釈しなかった。彼はていねいに礼をのべた。それからポケットへ手を入れると、何か紙に包んだものを取出した。それを開けると、中には緑色がかったねじの頭のようなものが、三つ四つはいってい...
博士はなにをはめてから、ねじの頭のようなものを掌の上にのせて重さをためしてみたか。
博士は手袋をはめてから、そのねじの頭のようなものを掌の上にのせて重さをためしてみたのだ。
JCRRAG_010712
国語
帆村荘六に対するよくない評判が、だんだんとこの村にも、隣村にも強くなっていった。室戸博士は、その旗頭のようなものであった。鉱山でも、帆村をよくいわない人達がふえた。  だが、それと反対に、帆村荘六に非常に親しみを持ち始めた者もあった。少数ではあったが……。その一人は児玉法学士であった。あとの一人は、山岸少年の兄の山岸中尉であった。  児玉法学士は、例の怪物が水蒸気のように消え去るところを目撃した、貴重な人物であるが、室戸博士はそれを信じてくれない。しかるに帆村荘六だけは、たいへんに真面目に、その話を聞いてくれ、そしてそれは貴重な資料だとほめてくれるのである。そこで児玉法学士は、帆村荘六が好きになったが、その他見ていると、帆村の熱心な...
帆村荘六に対するよくない評判が、だんだんとこの村にも、隣村にも強くなっていったとき、逆にどのような者もいたか。
それと反対に、帆村荘六に非常に親しみを持ち始めた者もあった。
JCRRAG_010713
国語
帆村荘六に対するよくない評判が、だんだんとこの村にも、隣村にも強くなっていった。室戸博士は、その旗頭のようなものであった。鉱山でも、帆村をよくいわない人達がふえた。  だが、それと反対に、帆村荘六に非常に親しみを持ち始めた者もあった。少数ではあったが……。その一人は児玉法学士であった。あとの一人は、山岸少年の兄の山岸中尉であった。  児玉法学士は、例の怪物が水蒸気のように消え去るところを目撃した、貴重な人物であるが、室戸博士はそれを信じてくれない。しかるに帆村荘六だけは、たいへんに真面目に、その話を聞いてくれ、そしてそれは貴重な資料だとほめてくれるのである。そこで児玉法学士は、帆村荘六が好きになったが、その他見ていると、帆村の熱心な...
二人の話に耳を傾けていた竜造寺兵曹長は、どのような反応をしたか。
二人の話に耳を傾けていた竜造寺兵曹長が、感きわまって、嘆声をあげた。
JCRRAG_010714
国語
ちょっと聞くと、非常に突飛に思われる帆村の宇宙戦争の警告が、山岸中尉と竜造寺兵曹長の共鳴するところとなったのは帆村にとって、たしかに気持のいいことだった。  それに児玉法学士も、あれ以来すっかり帆村と仲よしになり、調査隊の捜査のひまを見ては、鉱山の研究室へ帆村を訪ねることが多くなった。児玉は調査隊の七人組の助手の一人であるが、その中ではいちばん年が若いのであった。いや、他の六人がいずれも五十歳以上であるのに、児玉だけはまだ二十九歳であった。 「帆村君。何か新しい発見はなかったかね」  と、今日も児玉は、帆村をたずねて来た。 「おう、児玉君。さあこっちへはいりたまえ」と、帆村はすっかり親しみのある言葉づかいで、彼に一つの椅子をすすめた...
非常に突飛に思われる帆村の宇宙戦争の警告が、山岸中尉と竜造寺兵曹長の共鳴するところとなったのは帆村にとってどのようなものだったか。
非常に突飛に思われる帆村の宇宙戦争の警告が、山岸中尉と竜造寺兵曹長の共鳴するところとなったのは帆村にとって、たしかに気持のいいことだった。
JCRRAG_010715
国語
ちょっと聞くと、非常に突飛に思われる帆村の宇宙戦争の警告が、山岸中尉と竜造寺兵曹長の共鳴するところとなったのは帆村にとって、たしかに気持のいいことだった。  それに児玉法学士も、あれ以来すっかり帆村と仲よしになり、調査隊の捜査のひまを見ては、鉱山の研究室へ帆村を訪ねることが多くなった。児玉は調査隊の七人組の助手の一人であるが、その中ではいちばん年が若いのであった。いや、他の六人がいずれも五十歳以上であるのに、児玉だけはまだ二十九歳であった。 「帆村君。何か新しい発見はなかったかね」  と、今日も児玉は、帆村をたずねて来た。 「おう、児玉君。さあこっちへはいりたまえ」と、帆村はすっかり親しみのある言葉づかいで、彼に一つの椅子をすすめた...
児玉は何歳か。
児玉だけはまだ二十九歳であった。
JCRRAG_010716
国語
帆村は自動車を操縦して、深夜の街道を全速力で走った。  航空隊についたときは、もう翌日の午前一時になっていた。門をくぐって、衛兵に来意をつげると、衛兵は山岸中尉から連絡されていると見え、すぐ案内してくれた。 「やあ、よく来てくれましたね」  山岸中尉は、いつもとはちがい、すこし青ざめた顔によろこびの色をうかべて、帆村を迎えた。中尉は、さっきから竜造寺兵曹長の行方不明事件で、心をいためていたらしい。 「いったいどうしたのですか」 「いや、まあ、部屋で話しましょう」  山岸中尉は廊下を先に立って案内し、隊付という名札のかかっている自室へ、帆村をみちびき入れた。  部屋の中は広くないが、寝台が一つ置いてあり、机が一つ、衣服箱が一つ、壁には...
帆村は自動車を操縦して、深夜の街道をどのように走ったか。
帆村は自動車を操縦して、深夜の街道を全速力で走った。
JCRRAG_010717
国語
それからしばらくして、帆村はふっとわれにかえり、あたりを見廻した。山岸中尉の目とぶつかると、帆村はいった。 「兵曹長のこの最後の報告文は、おそらくこのまま信じない人もあるのでしょうね」  中尉はうなずいた。 「兵曹長はおかしいのだといっている者もあります。機体の故障が兵曹長にひどい恐怖をあたえたのだろうという者もあります。しかし私は竜造寺兵曹長を信頼している。そんなことで頭がどうかする兵曹長ではありません」  山岸中尉は、強い信念のほどを、はっきりしたことばでいった。 「この報告がまちがいないとすると、これはたいへんな事実を知らせてきているぞ」  帆村は頤をつまむ。 「それです。私があなたに来てもらったのは。あなたはこの報告文から、...
それからしばらくして、帆村はどのようにあたりを見廻したか。
それからしばらくして、帆村はふっとわれにかえり、あたりを見廻した。
JCRRAG_010718
国語
それからしばらくして、帆村はふっとわれにかえり、あたりを見廻した。山岸中尉の目とぶつかると、帆村はいった。 「兵曹長のこの最後の報告文は、おそらくこのまま信じない人もあるのでしょうね」  中尉はうなずいた。 「兵曹長はおかしいのだといっている者もあります。機体の故障が兵曹長にひどい恐怖をあたえたのだろうという者もあります。しかし私は竜造寺兵曹長を信頼している。そんなことで頭がどうかする兵曹長ではありません」  山岸中尉は、強い信念のほどを、はっきりしたことばでいった。 「この報告がまちがいないとすると、これはたいへんな事実を知らせてきているぞ」  帆村は頤をつまむ。 「それです。私があなたに来てもらったのは。あなたはこの報告文から、...
中尉はどこに手をおきながら帆村の唇を注視したか。
中尉は膝に手をおいて、帆村の唇を注視する。
JCRRAG_010719
国語
それからしばらくして、帆村はふっとわれにかえり、あたりを見廻した。山岸中尉の目とぶつかると、帆村はいった。 「兵曹長のこの最後の報告文は、おそらくこのまま信じない人もあるのでしょうね」  中尉はうなずいた。 「兵曹長はおかしいのだといっている者もあります。機体の故障が兵曹長にひどい恐怖をあたえたのだろうという者もあります。しかし私は竜造寺兵曹長を信頼している。そんなことで頭がどうかする兵曹長ではありません」  山岸中尉は、強い信念のほどを、はっきりしたことばでいった。 「この報告がまちがいないとすると、これはたいへんな事実を知らせてきているぞ」  帆村は頤をつまむ。 「それです。私があなたに来てもらったのは。あなたはこの報告文から、...
山岸中尉は、なぜ帆村についていけなかったか。
山岸中尉は、あまりに帆村の考えていることが突飛なので、すぐにはついていけなかった。
JCRRAG_010720
国語
山岸中尉は、その夜を帆村と語りあかしてつよい信念を得たようであった。  すぐにも彼は、竜造寺兵曹長を救いだしに行きたかったけれども、帆村が、「兵曹長の一命はとうぶん大丈夫ですよ」というので、やっぱり十分に準備をしてからでかけることにした。  山岸中尉は、翌日司令にいっさいをぶちまけて、宇宙戦研究班の編成方をねがった。  司令は驚かれた。しかし司令は、がんらい頭の明晰な人であったので、山岸中尉の話の中におごそかな事実のあるのを見てとり、中尉の願いをききいれた。司令は、上の人と相談を重ね、その結果、早くも翌々日には、臨時宇宙戦研究班というものが、この航空隊の中にできた。そして班長には、有名なる戦闘機乗りの大勇士である左倉少佐が就任した。...
山岸中尉は、その夜を帆村と語りあかしてなにを得たか。
山岸中尉は、その夜を帆村と語りあかしてつよい信念を得たようであった。
JCRRAG_010721
国語
山岸中尉は、その夜を帆村と語りあかしてつよい信念を得たようであった。  すぐにも彼は、竜造寺兵曹長を救いだしに行きたかったけれども、帆村が、「兵曹長の一命はとうぶん大丈夫ですよ」というので、やっぱり十分に準備をしてからでかけることにした。  山岸中尉は、翌日司令にいっさいをぶちまけて、宇宙戦研究班の編成方をねがった。  司令は驚かれた。しかし司令は、がんらい頭の明晰な人であったので、山岸中尉の話の中におごそかな事実のあるのを見てとり、中尉の願いをききいれた。司令は、上の人と相談を重ね、その結果、早くも翌々日には、臨時宇宙戦研究班というものが、この航空隊の中にできた。そして班長には、有名なる戦闘機乗りの大勇士である左倉少佐が就任した。...
山岸中尉は、翌日司令にいっさいをぶちまけて、なにをねがったか。
山岸中尉は、翌日司令にいっさいをぶちまけて、宇宙戦研究班の編成方をねがった。
JCRRAG_010722
国語
山岸中尉は、その夜を帆村と語りあかしてつよい信念を得たようであった。  すぐにも彼は、竜造寺兵曹長を救いだしに行きたかったけれども、帆村が、「兵曹長の一命はとうぶん大丈夫ですよ」というので、やっぱり十分に準備をしてからでかけることにした。  山岸中尉は、翌日司令にいっさいをぶちまけて、宇宙戦研究班の編成方をねがった。  司令は驚かれた。しかし司令は、がんらい頭の明晰な人であったので、山岸中尉の話の中におごそかな事実のあるのを見てとり、中尉の願いをききいれた。司令は、上の人と相談を重ね、その結果、早くも翌々日には、臨時宇宙戦研究班というものが、この航空隊の中にできた。そして班長には、有名なる戦闘機乗りの大勇士である左倉少佐が就任した。...
班長左倉少佐が、ある日、明かるい顔をしてもどってきたのを、をまっ先に見つけたのは誰だったか。
班長左倉少佐が、ある日、明かるい顔をしてもどってきたのを、をまっ先に見つけたのは山岸中尉だった。
JCRRAG_010723
国語
いよいよ宇宙偵察隊が出発する日が来た。その出発地点である忍谷では、夜あかしで準備がととのえられた。  噴射艇の彗星一号艇と二号艇とは、射出機の上にのり、もういつでも飛び出せるようになっていた。  この噴射艇は最新鋭のもので、特に宇宙飛行用に作ったものであるから、出発のときは、燃料や食糧をうんと積みこんでいるので、非常に重い。だからどうしても射出機を使わないと、うまいぐあいに出発ができないのだ。  その射出機も、ふつうのものでは力がたりないので、忍谷で用意したのは、電気砲の原理を使った射出機だった。これなら十分に初速も出るし、また電気でとびだすのだから、硝煙や噴射瓦斯のため地上の施設が損傷する心配もなかった。  高い鉄塔の上から照らし...
噴射艇はなぜ非常に重いのか。
この噴射艇は最新鋭のもので、特に宇宙飛行用に作ったものであるから、出発のときは、燃料や食糧をうんと積みこんでいるので、非常に重い。
JCRRAG_010724
国語
いよいよ宇宙偵察隊が出発する日が来た。その出発地点である忍谷では、夜あかしで準備がととのえられた。  噴射艇の彗星一号艇と二号艇とは、射出機の上にのり、もういつでも飛び出せるようになっていた。  この噴射艇は最新鋭のもので、特に宇宙飛行用に作ったものであるから、出発のときは、燃料や食糧をうんと積みこんでいるので、非常に重い。だからどうしても射出機を使わないと、うまいぐあいに出発ができないのだ。  その射出機も、ふつうのものでは力がたりないので、忍谷で用意したのは、電気砲の原理を使った射出機だった。これなら十分に初速も出るし、また電気でとびだすのだから、硝煙や噴射瓦斯のため地上の施設が損傷する心配もなかった。  高い鉄塔の上から照らし...
二つの艇はどのように高度をあげたか。
二つの艇は二組の尾をひきながら、すこしも狂わない調子で、ぐんぐん高度をあげていく。
JCRRAG_010725
国語
宇宙偵察隊の噴射艇二台は、引続き調子もよく、上昇していく。この噴射艇は、彗星号というその名にそむかないりっぱなものである。文字どおり彗星のように、空をきって行くのである。  噴射力が強いので、速度もすばらしく大きい。中でたいている噴射燃料というのが、特殊な混合爆薬で、これが燃焼して、すばらしく圧力の強い瓦斯を吹きだす。しかも噴射器の構造が非常にうまくできていて、最も速度が出るような仕掛になっている。  艇内は気密室になっている。しかも三重の気密室である。室内は、どんなに高度をあげても、気温や温度が大体高度三四千メートルと同様な状態に保たれ、それ以下には下らぬようになっている。この程度なら、空気をきれいに洗うことも、酸素をおぎなうこと...
宇宙偵察隊の噴射艇二台はどのような調子で上昇していったか。
宇宙偵察隊の噴射艇二台は、引続き調子もよく、上昇していく。
JCRRAG_010726
国語
宇宙偵察隊の噴射艇二台は、引続き調子もよく、上昇していく。この噴射艇は、彗星号というその名にそむかないりっぱなものである。文字どおり彗星のように、空をきって行くのである。  噴射力が強いので、速度もすばらしく大きい。中でたいている噴射燃料というのが、特殊な混合爆薬で、これが燃焼して、すばらしく圧力の強い瓦斯を吹きだす。しかも噴射器の構造が非常にうまくできていて、最も速度が出るような仕掛になっている。  艇内は気密室になっている。しかも三重の気密室である。室内は、どんなに高度をあげても、気温や温度が大体高度三四千メートルと同様な状態に保たれ、それ以下には下らぬようになっている。この程度なら、空気をきれいに洗うことも、酸素をおぎなうこと...
白昼だというのに、窓外はどのような状態だったか。
白昼だというのに、窓外はもうすっかり暗い。
JCRRAG_010727
国語
窓外はいよいよ暗黒だ。  死の世界、永遠の夜の世界だ。  その中に、どんな恐しい悪魔がひそんでいるかわからないのである。 「ノクトビジョンを働かしているか」  望月大尉から山岸中尉への注意だ。  ノクトビジョンとは、暗黒の中で、物の形を見る装置だ。これは一種のテレビジョンで、一名暗視装置ともいう。これで見るには、相手に向けて赤外線をあびせてやる。物があればこの赤外線で照らしつけてくれる。肉眼では見えないが、赤外線をよく感ずるノクトビジョン装置で見れば、まるで映画をみるようにはっきり物の形がわかるのである。 「高度二万五千メートル……」  帆村荘六が大きな声で報告する。 「あと三千で、問題の高度ですね」  山岸中尉は落ちついた声でそう...
帆村荘六はどのような声で報告したか。
帆村荘六は大きな声で報告した。
JCRRAG_010728
国語
窓外はいよいよ暗黒だ。  死の世界、永遠の夜の世界だ。  その中に、どんな恐しい悪魔がひそんでいるかわからないのである。 「ノクトビジョンを働かしているか」  望月大尉から山岸中尉への注意だ。  ノクトビジョンとは、暗黒の中で、物の形を見る装置だ。これは一種のテレビジョンで、一名暗視装置ともいう。これで見るには、相手に向けて赤外線をあびせてやる。物があればこの赤外線で照らしつけてくれる。肉眼では見えないが、赤外線をよく感ずるノクトビジョン装置で見れば、まるで映画をみるようにはっきり物の形がわかるのである。 「高度二万五千メートル……」  帆村荘六が大きな声で報告する。 「あと三千で、問題の高度ですね」  山岸中尉は落ちついた声でそう...
山岸中尉は、なにがきっかけで望月艇が、異変にぶつかったことを知ったか。
山岸中尉は、テレビジョンの幕の上にうつる望月大尉の急信号により、望月艇が、異変にぶつかったことを知った。
JCRRAG_010729
国語
窓外はいよいよ暗黒だ。  死の世界、永遠の夜の世界だ。  その中に、どんな恐しい悪魔がひそんでいるかわからないのである。 「ノクトビジョンを働かしているか」  望月大尉から山岸中尉への注意だ。  ノクトビジョンとは、暗黒の中で、物の形を見る装置だ。これは一種のテレビジョンで、一名暗視装置ともいう。これで見るには、相手に向けて赤外線をあびせてやる。物があればこの赤外線で照らしつけてくれる。肉眼では見えないが、赤外線をよく感ずるノクトビジョン装置で見れば、まるで映画をみるようにはっきり物の形がわかるのである。 「高度二万五千メートル……」  帆村荘六が大きな声で報告する。 「あと三千で、問題の高度ですね」  山岸中尉は落ちついた声でそう...
ノクトビジョンとは、どのような装置か。
ノクトビジョンとは、暗黒の中で、物の形を見る装置だ。
JCRRAG_010730
国語
窓外はいよいよ暗黒だ。  死の世界、永遠の夜の世界だ。  その中に、どんな恐しい悪魔がひそんでいるかわからないのである。 「ノクトビジョンを働かしているか」  望月大尉から山岸中尉への注意だ。  ノクトビジョンとは、暗黒の中で、物の形を見る装置だ。これは一種のテレビジョンで、一名暗視装置ともいう。これで見るには、相手に向けて赤外線をあびせてやる。物があればこの赤外線で照らしつけてくれる。肉眼では見えないが、赤外線をよく感ずるノクトビジョン装置で見れば、まるで映画をみるようにはっきり物の形がわかるのである。 「高度二万五千メートル……」  帆村荘六が大きな声で報告する。 「あと三千で、問題の高度ですね」  山岸中尉は落ちついた声でそう...
大きな衝動は、搭乗の三名にどのような影響を与えたか。
肉が骨から放れて、ばらばらになるかと思われるほどの大苦痛に襲われた。
JCRRAG_010731
国語
成層圏も、高度二万七千メートルになると、いやにすごくなる。まるで月光の下の墓場を見る感じだ。いや、それ以上だ。  いまはまだ昼間だというのに、空はすっかり光を失って、漆のように黒くぬりつぶされている。ただ光るものは、ダイヤモンドをまきちらしたような無数の星、それとならんで冷たく光っている銀盆のような衰えた太陽が見えるばかり。この荒涼たる成層圏風景を、うっかり永くながめていようものなら、そのうちに頭がへんになってくる。  そういう折しも、指揮官望月大尉ののった彗星一号艇が奇怪なる消失。あれよあれよといううちに、白く光る廻転楕円体の雲の中に包まれて、見えなくなったそのふしぎさ。なぜといって、高度二万七千メートルの成層圏には水蒸気は存在し...
成層圏は、まるでどのようなものか。
月光の下の墓場を見る感じだ。
JCRRAG_010732
国語
成層圏も、高度二万七千メートルになると、いやにすごくなる。まるで月光の下の墓場を見る感じだ。いや、それ以上だ。  いまはまだ昼間だというのに、空はすっかり光を失って、漆のように黒くぬりつぶされている。ただ光るものは、ダイヤモンドをまきちらしたような無数の星、それとならんで冷たく光っている銀盆のような衰えた太陽が見えるばかり。この荒涼たる成層圏風景を、うっかり永くながめていようものなら、そのうちに頭がへんになってくる。  そういう折しも、指揮官望月大尉ののった彗星一号艇が奇怪なる消失。あれよあれよといううちに、白く光る廻転楕円体の雲の中に包まれて、見えなくなったそのふしぎさ。なぜといって、高度二万七千メートルの成層圏には水蒸気は存在し...
昼間の空はどのようなものだったか。
まだ昼間だというのに、空はすっかり光を失って、漆のように黒くぬりつぶされている。
JCRRAG_010733
国語
成層圏も、高度二万七千メートルになると、いやにすごくなる。まるで月光の下の墓場を見る感じだ。いや、それ以上だ。  いまはまだ昼間だというのに、空はすっかり光を失って、漆のように黒くぬりつぶされている。ただ光るものは、ダイヤモンドをまきちらしたような無数の星、それとならんで冷たく光っている銀盆のような衰えた太陽が見えるばかり。この荒涼たる成層圏風景を、うっかり永くながめていようものなら、そのうちに頭がへんになってくる。  そういう折しも、指揮官望月大尉ののった彗星一号艇が奇怪なる消失。あれよあれよといううちに、白く光る廻転楕円体の雲の中に包まれて、見えなくなったそのふしぎさ。なぜといって、高度二万七千メートルの成層圏には水蒸気は存在し...
高度二万七千メートルの成層圏に曇は存在するか。
高度二万七千メートルの成層圏には水蒸気は存在しないから、雲がある道理がないのだ。
JCRRAG_010734
国語
成層圏も、高度二万七千メートルになると、いやにすごくなる。まるで月光の下の墓場を見る感じだ。いや、それ以上だ。  いまはまだ昼間だというのに、空はすっかり光を失って、漆のように黒くぬりつぶされている。ただ光るものは、ダイヤモンドをまきちらしたような無数の星、それとならんで冷たく光っている銀盆のような衰えた太陽が見えるばかり。この荒涼たる成層圏風景を、うっかり永くながめていようものなら、そのうちに頭がへんになってくる。  そういう折しも、指揮官望月大尉ののった彗星一号艇が奇怪なる消失。あれよあれよといううちに、白く光る廻転楕円体の雲の中に包まれて、見えなくなったそのふしぎさ。なぜといって、高度二万七千メートルの成層圏には水蒸気は存在し...
けっきょく、なにがわからなければ魔の空間の謎はとけはじめないか。
けっきょく「魔の空間」とはどんなものか、それがわからなければ、この謎はとけはじめないだろう。
JCRRAG_010735
国語
成層圏も、高度二万七千メートルになると、いやにすごくなる。まるで月光の下の墓場を見る感じだ。いや、それ以上だ。  いまはまだ昼間だというのに、空はすっかり光を失って、漆のように黒くぬりつぶされている。ただ光るものは、ダイヤモンドをまきちらしたような無数の星、それとならんで冷たく光っている銀盆のような衰えた太陽が見えるばかり。この荒涼たる成層圏風景を、うっかり永くながめていようものなら、そのうちに頭がへんになってくる。  そういう折しも、指揮官望月大尉ののった彗星一号艇が奇怪なる消失。あれよあれよといううちに、白く光る廻転楕円体の雲の中に包まれて、見えなくなったそのふしぎさ。なぜといって、高度二万七千メートルの成層圏には水蒸気は存在し...
弟の山岸少年は兄に対してどのような声をはりあげたか。
弟の山岸少年は、元気な声をはりあげて、兄にこたえた。
JCRRAG_010736
国語
山岸中尉は、ついに操縦桿から手を放した。もうこのうえ操縦桿を握っていることが意味なしと思ったからである。  繰縦桿を放しても、艇はすこぶる安定であった。山岸中尉は、こみあげてくる腹立たしさに、「ちえっ」と舌うちした。倒れた壁の下におさえつけられたも同様だ。  それから山岸中尉は、うしろをふりむいた。搭乗のあとの二人は、どんな顔をしているだろう……。  中尉の弟である山岸少年は、艇がいまどんな危険な状態にあるかということを、すこしも知らぬらしい顔つきで、しきりに無電機械を調整しつづけている。地上との通信が切れたのは、彼自身のせいだと思って、一生けんめい直しているのだった。  もう一人の搭乗者たる帆村荘六は、さっき大きな声で、「魔の空間...
なぜ山岸中尉は、操縦桿から手を放したか。
操縦桿を握っていることが意味なしと思ったからである。
JCRRAG_010737
国語
山岸中尉は、ついに操縦桿から手を放した。もうこのうえ操縦桿を握っていることが意味なしと思ったからである。  繰縦桿を放しても、艇はすこぶる安定であった。山岸中尉は、こみあげてくる腹立たしさに、「ちえっ」と舌うちした。倒れた壁の下におさえつけられたも同様だ。  それから山岸中尉は、うしろをふりむいた。搭乗のあとの二人は、どんな顔をしているだろう……。  中尉の弟である山岸少年は、艇がいまどんな危険な状態にあるかということを、すこしも知らぬらしい顔つきで、しきりに無電機械を調整しつづけている。地上との通信が切れたのは、彼自身のせいだと思って、一生けんめい直しているのだった。  もう一人の搭乗者たる帆村荘六は、さっき大きな声で、「魔の空間...
山岸少年は、どのように耳から受話器をはずしたか。
山岸少年は、はっと顔をあげて、耳から受話器をはずした。
JCRRAG_010738
国語
山岸中尉は、ついに操縦桿から手を放した。もうこのうえ操縦桿を握っていることが意味なしと思ったからである。  繰縦桿を放しても、艇はすこぶる安定であった。山岸中尉は、こみあげてくる腹立たしさに、「ちえっ」と舌うちした。倒れた壁の下におさえつけられたも同様だ。  それから山岸中尉は、うしろをふりむいた。搭乗のあとの二人は、どんな顔をしているだろう……。  中尉の弟である山岸少年は、艇がいまどんな危険な状態にあるかということを、すこしも知らぬらしい顔つきで、しきりに無電機械を調整しつづけている。地上との通信が切れたのは、彼自身のせいだと思って、一生けんめい直しているのだった。  もう一人の搭乗者たる帆村荘六は、さっき大きな声で、「魔の空間...
帆村は手帳を持ったまま席を立ち、中尉のそばへ行こうとした時に、山岸少年に何をしたか。
帆村は手帳を持ったまま席を立ち、中尉のそばへ行こうとしたが、ちょうど山岸少年が通りかかったので、彼に狭い通路をゆずってやった。
JCRRAG_010739
国語
山岸中尉は、ついに操縦桿から手を放した。もうこのうえ操縦桿を握っていることが意味なしと思ったからである。  繰縦桿を放しても、艇はすこぶる安定であった。山岸中尉は、こみあげてくる腹立たしさに、「ちえっ」と舌うちした。倒れた壁の下におさえつけられたも同様だ。  それから山岸中尉は、うしろをふりむいた。搭乗のあとの二人は、どんな顔をしているだろう……。  中尉の弟である山岸少年は、艇がいまどんな危険な状態にあるかということを、すこしも知らぬらしい顔つきで、しきりに無電機械を調整しつづけている。地上との通信が切れたのは、彼自身のせいだと思って、一生けんめい直しているのだった。  もう一人の搭乗者たる帆村荘六は、さっき大きな声で、「魔の空間...
中尉の観測では、自分たちの生命はどれくらいと思ったか。
中尉の観測では、自分たちの生命は、あと十五分か二十分ぐらいだろうと思った。
JCRRAG_010740
国語
山岸中尉は、ついに操縦桿から手を放した。もうこのうえ操縦桿を握っていることが意味なしと思ったからである。  繰縦桿を放しても、艇はすこぶる安定であった。山岸中尉は、こみあげてくる腹立たしさに、「ちえっ」と舌うちした。倒れた壁の下におさえつけられたも同様だ。  それから山岸中尉は、うしろをふりむいた。搭乗のあとの二人は、どんな顔をしているだろう……。  中尉の弟である山岸少年は、艇がいまどんな危険な状態にあるかということを、すこしも知らぬらしい顔つきで、しきりに無電機械を調整しつづけている。地上との通信が切れたのは、彼自身のせいだと思って、一生けんめい直しているのだった。  もう一人の搭乗者たる帆村荘六は、さっき大きな声で、「魔の空間...
山岸中尉は、どのようなことを思って戦うつもりだったか。
山岸中尉は、いよいよ来るものが来たと思って、戦うつもりだ。
JCRRAG_010741
国語
三人は、彗星二号艇から外へ出た。  緑色の怪物たちは、とびかかって来る様子もなく、おだやかに迎えた。  帆村は山岸兄弟よりも前に出た。そして緑色の怪物の中で、隊長らしく見える者の方へつかつかと寄った。 「せっかくあなたがたがよんでくださったものですから、やってきましたよ」  帆村は大きな声を出して、日本語でいった。山岸少年がびっくりして帆村の横顔をうかがった。  すると緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額をあつめて何やら相談をはじめたような様子であった。  山岸中尉が帆村に向かって何か言おうとした。帆村はそれを手で制した。そして、「それは後にしてください」と目で知らせた。緑色の怪物たちがどう出るか、いまは最も大事な時であったから、...
三人は、どこから外へ出たか。
三人は、彗星二号艇から外へ出た。
JCRRAG_010742
国語
三人は、彗星二号艇から外へ出た。  緑色の怪物たちは、とびかかって来る様子もなく、おだやかに迎えた。  帆村は山岸兄弟よりも前に出た。そして緑色の怪物の中で、隊長らしく見える者の方へつかつかと寄った。 「せっかくあなたがたがよんでくださったものですから、やってきましたよ」  帆村は大きな声を出して、日本語でいった。山岸少年がびっくりして帆村の横顔をうかがった。  すると緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額をあつめて何やら相談をはじめたような様子であった。  山岸中尉が帆村に向かって何か言おうとした。帆村はそれを手で制した。そして、「それは後にしてください」と目で知らせた。緑色の怪物たちがどう出るか、いまは最も大事な時であったから、...
緑色の怪物たちは、どのように迎えたか。
緑色の怪物たちは、とびかかって来る様子もなく、おだやかに迎えた。
JCRRAG_010743
国語
三人は、彗星二号艇から外へ出た。  緑色の怪物たちは、とびかかって来る様子もなく、おだやかに迎えた。  帆村は山岸兄弟よりも前に出た。そして緑色の怪物の中で、隊長らしく見える者の方へつかつかと寄った。 「せっかくあなたがたがよんでくださったものですから、やってきましたよ」  帆村は大きな声を出して、日本語でいった。山岸少年がびっくりして帆村の横顔をうかがった。  すると緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額をあつめて何やら相談をはじめたような様子であった。  山岸中尉が帆村に向かって何か言おうとした。帆村はそれを手で制した。そして、「それは後にしてください」と目で知らせた。緑色の怪物たちがどう出るか、いまは最も大事な時であったから、...
帆村はだれより前に出たか。
帆村は山岸兄弟よりも前に出た。
JCRRAG_010744
国語
三人は、彗星二号艇から外へ出た。  緑色の怪物たちは、とびかかって来る様子もなく、おだやかに迎えた。  帆村は山岸兄弟よりも前に出た。そして緑色の怪物の中で、隊長らしく見える者の方へつかつかと寄った。 「せっかくあなたがたがよんでくださったものですから、やってきましたよ」  帆村は大きな声を出して、日本語でいった。山岸少年がびっくりして帆村の横顔をうかがった。  すると緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額をあつめて何やら相談をはじめたような様子であった。  山岸中尉が帆村に向かって何か言おうとした。帆村はそれを手で制した。そして、「それは後にしてください」と目で知らせた。緑色の怪物たちがどう出るか、いまは最も大事な時であったから、...
帆村荘六は、この重大な質問を発することについて、なにをおさえることができなかったか。
帆村荘六は、この重大な質問を発することについて、さすがに鼓動の高くなるのをおさえかねた。
JCRRAG_010745
国語
三人は、彗星二号艇から外へ出た。  緑色の怪物たちは、とびかかって来る様子もなく、おだやかに迎えた。  帆村は山岸兄弟よりも前に出た。そして緑色の怪物の中で、隊長らしく見える者の方へつかつかと寄った。 「せっかくあなたがたがよんでくださったものですから、やってきましたよ」  帆村は大きな声を出して、日本語でいった。山岸少年がびっくりして帆村の横顔をうかがった。  すると緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額をあつめて何やら相談をはじめたような様子であった。  山岸中尉が帆村に向かって何か言おうとした。帆村はそれを手で制した。そして、「それは後にしてください」と目で知らせた。緑色の怪物たちがどう出るか、いまは最も大事な時であったから、...
緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額をあつめてどのような様子だったか。
緑色の怪物たちは、急にざわめきたち、額をあつめて何やら相談をはじめたような様子であった。
JCRRAG_010746
国語
緑鬼どもに組みつかれた帆村は、まず山岸中尉の方へ目で合図するのに骨を折った。山岸中尉の顔は、緑鬼どもにたいする怒りに燃えていた。が、帆村は「待て、しずかに……」と、目で知らせているので、中尉は拳をぶるぶるふるわせながら、かろうじてその位置に立っていた。 「ココミミ君。君たちは、僕を殺すためにやって来たのか、それとも地球を調べるためにやって来たのか、どっちです」  帆村は叫んだ。緑鬼の隊長と見えるココミミ君は、帆村のつよい言葉に、ぎくりとしたようであった。帆村たち地球人類を殺すために、ここへ封じこめたのではないことは、よくわかっている。しかし彼の部下は怒りっぽいのだ。帆村に図星をさされたことを憤って、帆村を殺そうとしているのだ。  コ...
ココミミ君は、どのように帆村の手を握ったか。
ココミミ君は、触角をするすると頭の中にしまいこみ、帆村のところへやってきて、手を握った。
JCRRAG_010747
国語
緑鬼どもに組みつかれた帆村は、まず山岸中尉の方へ目で合図するのに骨を折った。山岸中尉の顔は、緑鬼どもにたいする怒りに燃えていた。が、帆村は「待て、しずかに……」と、目で知らせているので、中尉は拳をぶるぶるふるわせながら、かろうじてその位置に立っていた。 「ココミミ君。君たちは、僕を殺すためにやって来たのか、それとも地球を調べるためにやって来たのか、どっちです」  帆村は叫んだ。緑鬼の隊長と見えるココミミ君は、帆村のつよい言葉に、ぎくりとしたようであった。帆村たち地球人類を殺すために、ここへ封じこめたのではないことは、よくわかっている。しかし彼の部下は怒りっぽいのだ。帆村に図星をさされたことを憤って、帆村を殺そうとしているのだ。  コ...
ココミミ君は、すっくと立上り、どのような姿勢になったか。
ココミミ君は、すっくと立上り、呼吸をするような姿勢になった。
JCRRAG_010748
国語
緑鬼どもに組みつかれた帆村は、まず山岸中尉の方へ目で合図するのに骨を折った。山岸中尉の顔は、緑鬼どもにたいする怒りに燃えていた。が、帆村は「待て、しずかに……」と、目で知らせているので、中尉は拳をぶるぶるふるわせながら、かろうじてその位置に立っていた。 「ココミミ君。君たちは、僕を殺すためにやって来たのか、それとも地球を調べるためにやって来たのか、どっちです」  帆村は叫んだ。緑鬼の隊長と見えるココミミ君は、帆村のつよい言葉に、ぎくりとしたようであった。帆村たち地球人類を殺すために、ここへ封じこめたのではないことは、よくわかっている。しかし彼の部下は怒りっぽいのだ。帆村に図星をさされたことを憤って、帆村を殺そうとしているのだ。  コ...
他の緑鬼どもは、いつの間にか起き上り、彗星二号艇のそばに立っている山岸中尉と山岸少年に何をしようとしたか。
他の緑鬼どもは、いつの間にか起き上り、彗星二号艇のそばに立っている、山岸中尉と山岸少年の方へ襲いかかろうとしている。
JCRRAG_010749
国語
緑鬼どもに組みつかれた帆村は、まず山岸中尉の方へ目で合図するのに骨を折った。山岸中尉の顔は、緑鬼どもにたいする怒りに燃えていた。が、帆村は「待て、しずかに……」と、目で知らせているので、中尉は拳をぶるぶるふるわせながら、かろうじてその位置に立っていた。 「ココミミ君。君たちは、僕を殺すためにやって来たのか、それとも地球を調べるためにやって来たのか、どっちです」  帆村は叫んだ。緑鬼の隊長と見えるココミミ君は、帆村のつよい言葉に、ぎくりとしたようであった。帆村たち地球人類を殺すために、ここへ封じこめたのではないことは、よくわかっている。しかし彼の部下は怒りっぽいのだ。帆村に図星をさされたことを憤って、帆村を殺そうとしているのだ。  コ...
帆村はだれの許しをえて、ココミミ君の申し出に同意したか。
帆村は山岸中尉の許しをえて、ココミミ君の申し出に同意した。
JCRRAG_010750
国語
緑鬼どもに組みつかれた帆村は、まず山岸中尉の方へ目で合図するのに骨を折った。山岸中尉の顔は、緑鬼どもにたいする怒りに燃えていた。が、帆村は「待て、しずかに……」と、目で知らせているので、中尉は拳をぶるぶるふるわせながら、かろうじてその位置に立っていた。 「ココミミ君。君たちは、僕を殺すためにやって来たのか、それとも地球を調べるためにやって来たのか、どっちです」  帆村は叫んだ。緑鬼の隊長と見えるココミミ君は、帆村のつよい言葉に、ぎくりとしたようであった。帆村たち地球人類を殺すために、ここへ封じこめたのではないことは、よくわかっている。しかし彼の部下は怒りっぽいのだ。帆村に図星をさされたことを憤って、帆村を殺そうとしているのだ。  コ...
ココミミ君は、どのように部下のそばへとんでいったか。
ココミミ君は、なにか意を決したもののごとく部下のそばへとんでいった。
JCRRAG_010751
国語
山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。  タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。どこからか円い卓子が持出された。椅子もはこんで来た。それから思いがけない御馳走が大きな器にいれられて、卓子の上におかれた。飲物のはいっている壜もきた。「水」だとか、「酒」だとか、「清涼飲料」とかの、日本字が書きつけてあった。 「さあ、どうぞ召上ってください」  と、タルミミ君らしい一人が、そういって挨拶をした。山岸中尉は返事に困った。 「御心配はいりません。これはあなた方にたべられないものでもなく、また毒がはいっているわけでもありません。安心して召上ってください」  タ...
山岸中尉と山岸少年の二人は、だれを送った後残ったか。
山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。
JCRRAG_010752
国語
山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。  タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。どこからか円い卓子が持出された。椅子もはこんで来た。それから思いがけない御馳走が大きな器にいれられて、卓子の上におかれた。飲物のはいっている壜もきた。「水」だとか、「酒」だとか、「清涼飲料」とかの、日本字が書きつけてあった。 「さあ、どうぞ召上ってください」  と、タルミミ君らしい一人が、そういって挨拶をした。山岸中尉は返事に困った。 「御心配はいりません。これはあなた方にたべられないものでもなく、また毒がはいっているわけでもありません。安心して召上ってください」  タ...
タルミミ隊は、だれの前で活動をはじめたか。
タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。
JCRRAG_010753
国語
山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。  タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。どこからか円い卓子が持出された。椅子もはこんで来た。それから思いがけない御馳走が大きな器にいれられて、卓子の上におかれた。飲物のはいっている壜もきた。「水」だとか、「酒」だとか、「清涼飲料」とかの、日本字が書きつけてあった。 「さあ、どうぞ召上ってください」  と、タルミミ君らしい一人が、そういって挨拶をした。山岸中尉は返事に困った。 「御心配はいりません。これはあなた方にたべられないものでもなく、また毒がはいっているわけでもありません。安心して召上ってください」  タ...
中尉はだれをかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていたか。
中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。
JCRRAG_010754
国語
山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。  タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。どこからか円い卓子が持出された。椅子もはこんで来た。それから思いがけない御馳走が大きな器にいれられて、卓子の上におかれた。飲物のはいっている壜もきた。「水」だとか、「酒」だとか、「清涼飲料」とかの、日本字が書きつけてあった。 「さあ、どうぞ召上ってください」  と、タルミミ君らしい一人が、そういって挨拶をした。山岸中尉は返事に困った。 「御心配はいりません。これはあなた方にたべられないものでもなく、また毒がはいっているわけでもありません。安心して召上ってください」  タ...
少年は、なにをかかえこんでしまって、妙な気持でいるのか。
少年は、このふしぎな「魔の空間」の中でとききれないたくさんの謎をかかえこんでしまって、妙な気持でいるのだった。
JCRRAG_010755
国語
山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。  タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。どこからか円い卓子が持出された。椅子もはこんで来た。それから思いがけない御馳走が大きな器にいれられて、卓子の上におかれた。飲物のはいっている壜もきた。「水」だとか、「酒」だとか、「清涼飲料」とかの、日本字が書きつけてあった。 「さあ、どうぞ召上ってください」  と、タルミミ君らしい一人が、そういって挨拶をした。山岸中尉は返事に困った。 「御心配はいりません。これはあなた方にたべられないものでもなく、また毒がはいっているわけでもありません。安心して召上ってください」  タ...
山岸少年は、だれののんきさ加減にあきれたか。
山岸少年は、兄ののんきさ加減にあきれてしまった。
JCRRAG_010756
国語
 自分でも、ぎょっとしたほど、陰惨な絵が出来上りました。しかし、これこそ胸底にひた隠しに隠している自分の正体なのだ、おもては陽気に笑い、また人を笑わせているけれども、実は、こんな陰鬱な心を自分は持っているのだ、仕方が無い、とひそかに肯定し、けれどもその絵は、竹一以外の人には、さすがに誰にも見せませんでした。自分のお道化の底の陰惨を見破られ、急にケチくさく警戒せられるのもいやでしたし、また、これを自分の正体とも気づかず、やっぱり新趣向のお道化と見なされ、大笑いの種にせられるかも知れぬという懸念もあり、それは何よりもつらい事でしたので、その絵はすぐに押入れの奥深くしまい込みました。  また、学校の図画の時間にも、自分はあの「お化け式手法...
竹一以外の人には、さすがに誰にも見せられないと感じた絵とは、どのような絵でしたか。
竹一以外の人には、さすがに誰にも見せられないと感じた絵は、自分でも、ぎょっとしたほど、陰惨な絵が出来上り、これこそ胸底にひた隠しに隠している自分の正体なのだ、おもては陽気に笑い、また人を笑わせているけれども、実は、こんな陰鬱な心を自分は持っているのだ、仕方が無い、と思うほどのものでした。
JCRRAG_010757
国語
 自分でも、ぎょっとしたほど、陰惨な絵が出来上りました。しかし、これこそ胸底にひた隠しに隠している自分の正体なのだ、おもては陽気に笑い、また人を笑わせているけれども、実は、こんな陰鬱な心を自分は持っているのだ、仕方が無い、とひそかに肯定し、けれどもその絵は、竹一以外の人には、さすがに誰にも見せませんでした。自分のお道化の底の陰惨を見破られ、急にケチくさく警戒せられるのもいやでしたし、また、これを自分の正体とも気づかず、やっぱり新趣向のお道化と見なされ、大笑いの種にせられるかも知れぬという懸念もあり、それは何よりもつらい事でしたので、その絵はすぐに押入れの奥深くしまい込みました。  また、学校の図画の時間にも、自分はあの「お化け式手法...
胸底にひた隠しに隠している自分の正体とはどんなものだと思いましたか。
胸底にひた隠しに隠している自分の正体は、おもては陽気に笑い、また人を笑わせているけれども、実は、こんな陰鬱な心を自分は持っているのだ、仕方が無い、とひそかに肯定しながら、竹一以外の人には、さすがに自分の描いた絵は誰にも見せられないと思いました。
JCRRAG_010758
国語
 自分でも、ぎょっとしたほど、陰惨な絵が出来上りました。しかし、これこそ胸底にひた隠しに隠している自分の正体なのだ、おもては陽気に笑い、また人を笑わせているけれども、実は、こんな陰鬱な心を自分は持っているのだ、仕方が無い、とひそかに肯定し、けれどもその絵は、竹一以外の人には、さすがに誰にも見せませんでした。自分のお道化の底の陰惨を見破られ、急にケチくさく警戒せられるのもいやでしたし、また、これを自分の正体とも気づかず、やっぱり新趣向のお道化と見なされ、大笑いの種にせられるかも知れぬという懸念もあり、それは何よりもつらい事でしたので、その絵はすぐに押入れの奥深くしまい込みました。  また、学校の図画の時間にも、自分はあの「お化け式手法...
「自分」はどのようなことを懸念して、絵を押入れの奥深くにしまい込みましたか。
絵を押入れの奥深くにしまい込んだ時に「自分」が懸念したことは、自分が普段他の人に見せているお道化の底の陰惨を見破られ、急にケチくさく警戒せられるのもいやでしたし、また、これを自分の正体とも気づかず、やっぱり新趣向のお道化と見なされ、大笑いの種にせられるかも知れぬという懸念もあり、それは何よりもつらい事でしたので、その絵はすぐに押入れの奥深くしまい込みました。
JCRRAG_010759
国語
 自分でも、ぎょっとしたほど、陰惨な絵が出来上りました。しかし、これこそ胸底にひた隠しに隠している自分の正体なのだ、おもては陽気に笑い、また人を笑わせているけれども、実は、こんな陰鬱な心を自分は持っているのだ、仕方が無い、とひそかに肯定し、けれどもその絵は、竹一以外の人には、さすがに誰にも見せませんでした。自分のお道化の底の陰惨を見破られ、急にケチくさく警戒せられるのもいやでしたし、また、これを自分の正体とも気づかず、やっぱり新趣向のお道化と見なされ、大笑いの種にせられるかも知れぬという懸念もあり、それは何よりもつらい事でしたので、その絵はすぐに押入れの奥深くしまい込みました。  また、学校の図画の時間にも、自分はあの「お化け式手法...
自分は人に笑われるかもしれない恐れのある「お化けの絵」を、恐れることなく誰に見せることができていましたか。
自分は人に笑われるかもしれない恐れのある「お化けの絵」を、恐れることなく竹一にだけは、前から自分の傷み易い神経を平気で見せてきたので、絵を見せられると思いました。
JCRRAG_010760
国語
 父は議会の無い時は、月に一週間か二週間しかその家に滞在していませんでしたので、父の留守の時は、かなり広いその家に、別荘番の老夫婦と自分と三人だけで、自分は、ちょいちょい学校を休んで、さりとて東京見物などをする気も起らず(自分はとうとう、明治神宮も、楠正成の銅像も、泉岳寺の四十七士の墓も見ずに終りそうです)家で一日中、本を読んだり、絵をかいたりしていました。父が上京して来ると、自分は、毎朝そそくさと登校するのでしたが、しかし、本郷千駄木町の洋画家、安田新太郎氏の画塾に行き、三時間も四時間も、デッサンの練習をしている事もあったのです。高等学校の寮から脱けたら、学校の授業に出ても、自分はまるで聴講生みたいな特別の位置にいるような、それは...
父は議会の無い時は、その家にどのくらいの期間滞在していましたか。
父は議会の無い時は、月に一週間か二週間しか別荘番の老夫婦と自分がいるかなり広い家には滞在していませんでした。
JCRRAG_010761
国語
 父は議会の無い時は、月に一週間か二週間しかその家に滞在していませんでしたので、父の留守の時は、かなり広いその家に、別荘番の老夫婦と自分と三人だけで、自分は、ちょいちょい学校を休んで、さりとて東京見物などをする気も起らず(自分はとうとう、明治神宮も、楠正成の銅像も、泉岳寺の四十七士の墓も見ずに終りそうです)家で一日中、本を読んだり、絵をかいたりしていました。父が上京して来ると、自分は、毎朝そそくさと登校するのでしたが、しかし、本郷千駄木町の洋画家、安田新太郎氏の画塾に行き、三時間も四時間も、デッサンの練習をしている事もあったのです。高等学校の寮から脱けたら、学校の授業に出ても、自分はまるで聴講生みたいな特別の位置にいるような、それは...
父が留守の時は、自分はその家で何をしていましたか。
父の留守の時は、自分はその家でちょいちょい学校を休んで、さりとて東京見物などをする気も起らず、家で一日中、本を読んだり、絵をかいたりしていました。
JCRRAG_010762
国語
 父は議会の無い時は、月に一週間か二週間しかその家に滞在していませんでしたので、父の留守の時は、かなり広いその家に、別荘番の老夫婦と自分と三人だけで、自分は、ちょいちょい学校を休んで、さりとて東京見物などをする気も起らず(自分はとうとう、明治神宮も、楠正成の銅像も、泉岳寺の四十七士の墓も見ずに終りそうです)家で一日中、本を読んだり、絵をかいたりしていました。父が上京して来ると、自分は、毎朝そそくさと登校するのでしたが、しかし、本郷千駄木町の洋画家、安田新太郎氏の画塾に行き、三時間も四時間も、デッサンの練習をしている事もあったのです。高等学校の寮から脱けたら、学校の授業に出ても、自分はまるで聴講生みたいな特別の位置にいるような、それは...
自分は、小学校、中学校、高等学校を通じて、何が理解できずに終りましたか。
自分には、小学校、中学校、高等学校を通じて、ついに愛校心というものが理解できずに終りました。
JCRRAG_010763
国語
 父は議会の無い時は、月に一週間か二週間しかその家に滞在していませんでしたので、父の留守の時は、かなり広いその家に、別荘番の老夫婦と自分と三人だけで、自分は、ちょいちょい学校を休んで、さりとて東京見物などをする気も起らず(自分はとうとう、明治神宮も、楠正成の銅像も、泉岳寺の四十七士の墓も見ずに終りそうです)家で一日中、本を読んだり、絵をかいたりしていました。父が上京して来ると、自分は、毎朝そそくさと登校するのでしたが、しかし、本郷千駄木町の洋画家、安田新太郎氏の画塾に行き、三時間も四時間も、デッサンの練習をしている事もあったのです。高等学校の寮から脱けたら、学校の授業に出ても、自分はまるで聴講生みたいな特別の位置にいるような、それは...
自分は、或る画学生から、何を知らされましたか。
自分は、或る画学生から、酒と煙草と淫売婦と質屋と左翼思想とを知らされました。
JCRRAG_010764
国語
 自分は、やがて画塾で、或る画学生から、酒と煙草と淫売婦と質屋と左翼思想とを知らされました。妙な取合せでしたが、しかし、それは事実でした。  その画学生は、堀木正雄といって、東京の下町に生れ、自分より六つ年長者で、私立の美術学校を卒業して、家にアトリエが無いので、この画塾に通い、洋画の勉強をつづけているのだそうです。 「五円、貸してくれないか」  お互いただ顔を見知っているだけで、それまで一言も話合った事が無かったのです。自分は、へどもどして五円差し出しました。 「よし、飲もう。おれが、お前におごるんだ。よかチゴじゃのう」  自分は拒否し切れず、その画塾の近くの、蓬莱町のカフエに引っぱって行かれたのが、彼との交友のはじまりでした。 ...
堀木正雄と自分は、彼が「五円、貸してくれないか」と話しかけてくるまで、話したことがありましたか。
堀木正雄と自分は、彼が「五円、貸してくれないか」と話しかけてくるまで、お互いただ顔を見知っているだけで、それまで一言も話したことはありませんでした
JCRRAG_010765
国語
 自分は、やがて画塾で、或る画学生から、酒と煙草と淫売婦と質屋と左翼思想とを知らされました。妙な取合せでしたが、しかし、それは事実でした。  その画学生は、堀木正雄といって、東京の下町に生れ、自分より六つ年長者で、私立の美術学校を卒業して、家にアトリエが無いので、この画塾に通い、洋画の勉強をつづけているのだそうです。 「五円、貸してくれないか」  お互いただ顔を見知っているだけで、それまで一言も話合った事が無かったのです。自分は、へどもどして五円差し出しました。 「よし、飲もう。おれが、お前におごるんだ。よかチゴじゃのう」  自分は拒否し切れず、その画塾の近くの、蓬莱町のカフエに引っぱって行かれたのが、彼との交友のはじまりでした。 ...
彼との交友のはじまりはどのような出来事がきっかけでしたか。
彼との交友のはじまりは、へどもどして五円差し出すと、「よし、飲もう。おれが、お前におごるんだ。よかチゴじゃのう」と言われ、その画塾の近くの、蓬莱町のカフエに引っぱって行かれたことでした。
JCRRAG_010766
国語
 自分は、やがて画塾で、或る画学生から、酒と煙草と淫売婦と質屋と左翼思想とを知らされました。妙な取合せでしたが、しかし、それは事実でした。  その画学生は、堀木正雄といって、東京の下町に生れ、自分より六つ年長者で、私立の美術学校を卒業して、家にアトリエが無いので、この画塾に通い、洋画の勉強をつづけているのだそうです。 「五円、貸してくれないか」  お互いただ顔を見知っているだけで、それまで一言も話合った事が無かったのです。自分は、へどもどして五円差し出しました。 「よし、飲もう。おれが、お前におごるんだ。よかチゴじゃのう」  自分は拒否し切れず、その画塾の近くの、蓬莱町のカフエに引っぱって行かれたのが、彼との交友のはじまりでした。 ...
堀木の見た目は、どのような特徴がありましたか。
堀木の見た目は、、色が浅黒く端正な顔をしていて、画学生には珍らしく、ちゃんとした脊広を着て、ネクタイの好みも地味で、そうして頭髪もポマードをつけてまん中からぺったりとわけていました。
JCRRAG_010767
国語
 自分は、やがて画塾で、或る画学生から、酒と煙草と淫売婦と質屋と左翼思想とを知らされました。妙な取合せでしたが、しかし、それは事実でした。  その画学生は、堀木正雄といって、東京の下町に生れ、自分より六つ年長者で、私立の美術学校を卒業して、家にアトリエが無いので、この画塾に通い、洋画の勉強をつづけているのだそうです。 「五円、貸してくれないか」  お互いただ顔を見知っているだけで、それまで一言も話合った事が無かったのです。自分は、へどもどして五円差し出しました。 「よし、飲もう。おれが、お前におごるんだ。よかチゴじゃのう」  自分は拒否し切れず、その画塾の近くの、蓬莱町のカフエに引っぱって行かれたのが、彼との交友のはじまりでした。 ...
自分は堀木を、何をするのにいい相手かも知れないと考えましたか。
自分は堀木を、馬鹿なひとだ、絵も下手にちがいない、しかし、遊ぶのには、いい相手かも知れないと考えました。
JCRRAG_010768
国語
 自分は、やがて画塾で、或る画学生から、酒と煙草と淫売婦と質屋と左翼思想とを知らされました。妙な取合せでしたが、しかし、それは事実でした。  その画学生は、堀木正雄といって、東京の下町に生れ、自分より六つ年長者で、私立の美術学校を卒業して、家にアトリエが無いので、この画塾に通い、洋画の勉強をつづけているのだそうです。 「五円、貸してくれないか」  お互いただ顔を見知っているだけで、それまで一言も話合った事が無かったのです。自分は、へどもどして五円差し出しました。 「よし、飲もう。おれが、お前におごるんだ。よかチゴじゃのう」  自分は拒否し切れず、その画塾の近くの、蓬莱町のカフエに引っぱって行かれたのが、彼との交友のはじまりでした。 ...
堀木正雄が自分と本質的に異色のところだと考えたのはどのようなところですか。
堀木正雄が自分と本質的に異色のところだと考えたのは彼はこの世の人間の営みから完全に遊離してしまって、戸迷いしているお道化を意識せずに行い、しかも、そのお道化の悲惨に全く気がついていないのが、自分と本質的に異色のところです。
JCRRAG_010769
国語
 ただ遊ぶだけだ、遊びの相手として附合っているだけだ、とつねに彼を軽蔑し、時には彼との交友を恥ずかしくさえ思いながら、彼と連れ立って歩いているうちに、結局、自分は、この男にさえ打ち破られました。  しかし、はじめは、この男を好人物、まれに見る好人物とばかり思い込み、さすが人間恐怖の自分も全く油断をして、東京のよい案内者が出来た、くらいに思っていました。自分は、実は、ひとりでは、電車に乗ると車掌がおそろしく、歌舞伎座へはいりたくても、あの正面玄関の緋の絨緞が敷かれてある階段の両側に並んで立っている案内嬢たちがおそろしく、レストランへはいると、自分の背後にひっそり立って、皿のあくのを待っている給仕のボーイがおそろしく、殊にも勘定を払う時...
自分が一日一ぱい家の中で、ごろごろしていたことが多かったのはなぜですか。
自分が一日一ぱい家の中で、ごろごろしていたことが多かったのは実は、ひとりでは、電車に乗ると車掌がおそろしく、歌舞伎座へはいりたくても、あの正面玄関の緋の絨緞が敷かれてある階段の両側に並んで立っている案内嬢たちがおそろしく、レストランへはいると、自分の背後にひっそり立って、皿のあくのを待っている給仕のボーイがおそろしく、殊にも勘定を払う時、ああ、ぎごちない自分の手つき、自分は買い物をしてお金を手渡す時には、吝嗇ゆえでなく、あまりの緊張、あまりの恥ずかしさ、あまりの不安、恐怖に、くらくら目まいして、世界が真暗になり、ほとんど半狂乱の気持になってしまって、値切るどころか、お釣を受け取るのを忘れるばかりでなく、買った品物を持ち帰るのを忘れた...
JCRRAG_010770
国語
 ただ遊ぶだけだ、遊びの相手として附合っているだけだ、とつねに彼を軽蔑し、時には彼との交友を恥ずかしくさえ思いながら、彼と連れ立って歩いているうちに、結局、自分は、この男にさえ打ち破られました。  しかし、はじめは、この男を好人物、まれに見る好人物とばかり思い込み、さすが人間恐怖の自分も全く油断をして、東京のよい案内者が出来た、くらいに思っていました。自分は、実は、ひとりでは、電車に乗ると車掌がおそろしく、歌舞伎座へはいりたくても、あの正面玄関の緋の絨緞が敷かれてある階段の両側に並んで立っている案内嬢たちがおそろしく、レストランへはいると、自分の背後にひっそり立って、皿のあくのを待っている給仕のボーイがおそろしく、殊にも勘定を払う時...
掘木に財布を渡して一緒に歩くと、どうなりましたか。
掘木に財布を渡して一緒に歩くと、堀木は大いに値切って、しかも遊び上手というのか、わずかなお金で最大の効果のあるような支払い振りを発揮し、勘定に就いては自分に、一つも不安、恐怖を覚えさせた事がありませんでした。
JCRRAG_010771
国語
 ただ遊ぶだけだ、遊びの相手として附合っているだけだ、とつねに彼を軽蔑し、時には彼との交友を恥ずかしくさえ思いながら、彼と連れ立って歩いているうちに、結局、自分は、この男にさえ打ち破られました。  しかし、はじめは、この男を好人物、まれに見る好人物とばかり思い込み、さすが人間恐怖の自分も全く油断をして、東京のよい案内者が出来た、くらいに思っていました。自分は、実は、ひとりでは、電車に乗ると車掌がおそろしく、歌舞伎座へはいりたくても、あの正面玄関の緋の絨緞が敷かれてある階段の両側に並んで立っている案内嬢たちがおそろしく、レストランへはいると、自分の背後にひっそり立って、皿のあくのを待っている給仕のボーイがおそろしく、殊にも勘定を払う時...
堀木は、酔いが早く発するのは何であるといいましたか?
堀木は、酔いが早く発するのは、電気ブランの右に出るものはないと保証しました。
JCRRAG_010772
国語
 ただ遊ぶだけだ、遊びの相手として附合っているだけだ、とつねに彼を軽蔑し、時には彼との交友を恥ずかしくさえ思いながら、彼と連れ立って歩いているうちに、結局、自分は、この男にさえ打ち破られました。  しかし、はじめは、この男を好人物、まれに見る好人物とばかり思い込み、さすが人間恐怖の自分も全く油断をして、東京のよい案内者が出来た、くらいに思っていました。自分は、実は、ひとりでは、電車に乗ると車掌がおそろしく、歌舞伎座へはいりたくても、あの正面玄関の緋の絨緞が敷かれてある階段の両側に並んで立っている案内嬢たちがおそろしく、レストランへはいると、自分の背後にひっそり立って、皿のあくのを待っている給仕のボーイがおそろしく、殊にも勘定を払う時...
自分が、堀木と附合って救われると感じるのは、どのようなところですか。
自分が、堀木と附合って救われると感じるのは、堀木が聞き手の思惑などをてんで無視して、その所謂情熱の噴出するがままに、(或いは、情熱とは、相手の立場を無視する事かも知れませんが)四六時中、くだらないおしゃべりを続け、あの、二人で歩いて疲れ、気まずい沈黙におちいる危懼が、全く無いという事です。
JCRRAG_010773
国語
 酒、煙草、淫売婦、それは皆、人間恐怖を、たとい一時でも、まぎらす事の出来るずいぶんよい手段である事が、やがて自分にもわかって来ました。それらの手段を求めるためには、自分の持ち物全部を売却しても悔いない気持さえ、抱くようになりました。  自分には、淫売婦というものが、人間でも、女性でもない、白痴か狂人のように見え、そのふところの中で、自分はかえって全く安心して、ぐっすり眠る事が出来ました。みんな、哀しいくらい、実にみじんも慾というものが無いのでした。そうして、自分に、同類の親和感とでもいったようなものを覚えるのか、自分は、いつも、その淫売婦たちから、窮屈でない程度の自然の好意を示されました。何の打算も無い好意、押し売りでは無い好意、...
自分は、たとい一時でも人間恐怖をまぎらす事の出来るよい手段である事だとわかってきたのはどのようなことでしたか。
自分は、たとい一時でも人間恐怖をまぎらす事の出来るよい手段である事だとわかってきたのは酒、煙草、淫売婦、でした。
JCRRAG_010774
国語
 酒、煙草、淫売婦、それは皆、人間恐怖を、たとい一時でも、まぎらす事の出来るずいぶんよい手段である事が、やがて自分にもわかって来ました。それらの手段を求めるためには、自分の持ち物全部を売却しても悔いない気持さえ、抱くようになりました。  自分には、淫売婦というものが、人間でも、女性でもない、白痴か狂人のように見え、そのふところの中で、自分はかえって全く安心して、ぐっすり眠る事が出来ました。みんな、哀しいくらい、実にみじんも慾というものが無いのでした。そうして、自分に、同類の親和感とでもいったようなものを覚えるのか、自分は、いつも、その淫売婦たちから、窮屈でない程度の自然の好意を示されました。何の打算も無い好意、押し売りでは無い好意、...
自分は、淫売婦というものが、どのような存在に見え、どのように感じましたか。
自分には、淫売婦というものが、人間でも、女性でもない、白痴か狂人のように見え、そのふところの中で、自分はかえって全く安心して、ぐっすり眠る事が出来ました。
JCRRAG_010775
国語
 酒、煙草、淫売婦、それは皆、人間恐怖を、たとい一時でも、まぎらす事の出来るずいぶんよい手段である事が、やがて自分にもわかって来ました。それらの手段を求めるためには、自分の持ち物全部を売却しても悔いない気持さえ、抱くようになりました。  自分には、淫売婦というものが、人間でも、女性でもない、白痴か狂人のように見え、そのふところの中で、自分はかえって全く安心して、ぐっすり眠る事が出来ました。みんな、哀しいくらい、実にみじんも慾というものが無いのでした。そうして、自分に、同類の親和感とでもいったようなものを覚えるのか、自分は、いつも、その淫売婦たちから、窮屈でない程度の自然の好意を示されました。何の打算も無い好意、押し売りでは無い好意、...
自分は、いつも、その淫売婦たちから、何を示されましたか。
自分は、いつも、その淫売婦たちから、窮屈でない程度の自然の好意を示されました。
JCRRAG_010776
国語
 酒、煙草、淫売婦、それは皆、人間恐怖を、たとい一時でも、まぎらす事の出来るずいぶんよい手段である事が、やがて自分にもわかって来ました。それらの手段を求めるためには、自分の持ち物全部を売却しても悔いない気持さえ、抱くようになりました。  自分には、淫売婦というものが、人間でも、女性でもない、白痴か狂人のように見え、そのふところの中で、自分はかえって全く安心して、ぐっすり眠る事が出来ました。みんな、哀しいくらい、実にみじんも慾というものが無いのでした。そうして、自分に、同類の親和感とでもいったようなものを覚えるのか、自分は、いつも、その淫売婦たちから、窮屈でない程度の自然の好意を示されました。何の打算も無い好意、押し売りでは無い好意、...
自分は、その白痴か狂人の淫売婦たちに、どのようなものを見た夜もありましたか。
自分は、その白痴か狂人の淫売婦たちに、マリヤの円光を現実に見た夜もあったのです。
JCRRAG_010777
国語
堀木はそれを半分はお世辞で言ったのでしょうが、しかし、自分にも、重苦しく思い当る事があり、たとえば、喫茶店の女から稚拙な手紙をもらった覚えもあるし、桜木町の家の隣りの将軍のはたちくらいの娘が、毎朝、自分の登校の時刻には、用も無さそうなのに、ご自分の家の門を薄化粧して出たりはいったりしていたし、牛肉を食いに行くと、自分が黙っていても、そこの女中が、……また、いつも買いつけの煙草屋の娘から手渡された煙草の箱の中に、……また、歌舞伎を見に行って隣りの席のひとに、……また、深夜の市電で自分が酔って眠っていて、……また、思いがけなく故郷の親戚の娘から、思いつめたような手紙が来て、……また、誰かわからぬ娘が、自分の留守中にお手製らしい人形を、…...
桜木町の家の隣りの将軍のはたちくらいの娘は、ご自分の家の門で何をしていたか。
桜木町の家の隣りの将軍のはたちくらいの娘が、毎朝、自分の登校の時刻には、用も無さそうなのに、ご自分の家の門を薄化粧して出たりはいったりしていました。
JCRRAG_010778
国語
堀木はそれを半分はお世辞で言ったのでしょうが、しかし、自分にも、重苦しく思い当る事があり、たとえば、喫茶店の女から稚拙な手紙をもらった覚えもあるし、桜木町の家の隣りの将軍のはたちくらいの娘が、毎朝、自分の登校の時刻には、用も無さそうなのに、ご自分の家の門を薄化粧して出たりはいったりしていたし、牛肉を食いに行くと、自分が黙っていても、そこの女中が、……また、いつも買いつけの煙草屋の娘から手渡された煙草の箱の中に、……また、歌舞伎を見に行って隣りの席のひとに、……また、深夜の市電で自分が酔って眠っていて、……また、思いがけなく故郷の親戚の娘から、思いつめたような手紙が来て、……また、誰かわからぬ娘が、自分の留守中にお手製らしい人形を、…...
自分が極度に消極的だったため、どうなりましたか。
自分が極度に消極的だったため、いずれも、それっきりの話で、ただ断片、それ以上の進展は一つもありませんでした。
JCRRAG_010779
国語
堀木はそれを半分はお世辞で言ったのでしょうが、しかし、自分にも、重苦しく思い当る事があり、たとえば、喫茶店の女から稚拙な手紙をもらった覚えもあるし、桜木町の家の隣りの将軍のはたちくらいの娘が、毎朝、自分の登校の時刻には、用も無さそうなのに、ご自分の家の門を薄化粧して出たりはいったりしていたし、牛肉を食いに行くと、自分が黙っていても、そこの女中が、……また、いつも買いつけの煙草屋の娘から手渡された煙草の箱の中に、……また、歌舞伎を見に行って隣りの席のひとに、……また、深夜の市電で自分が酔って眠っていて、……また、思いがけなく故郷の親戚の娘から、思いつめたような手紙が来て、……また、誰かわからぬ娘が、自分の留守中にお手製らしい人形を、…...
自分につきまとっている雰囲気はどんなものですか。
自分につきまとっている雰囲気は、何か女に夢を見させる雰囲気で、それは、のろけだの何だのといういい加減な冗談でなく、否定できませんでした
JCRRAG_010780
国語
堀木はそれを半分はお世辞で言ったのでしょうが、しかし、自分にも、重苦しく思い当る事があり、たとえば、喫茶店の女から稚拙な手紙をもらった覚えもあるし、桜木町の家の隣りの将軍のはたちくらいの娘が、毎朝、自分の登校の時刻には、用も無さそうなのに、ご自分の家の門を薄化粧して出たりはいったりしていたし、牛肉を食いに行くと、自分が黙っていても、そこの女中が、……また、いつも買いつけの煙草屋の娘から手渡された煙草の箱の中に、……また、歌舞伎を見に行って隣りの席のひとに、……また、深夜の市電で自分が酔って眠っていて、……また、思いがけなく故郷の親戚の娘から、思いつめたような手紙が来て、……また、誰かわからぬ娘が、自分の留守中にお手製らしい人形を、…...
自分は、それを堀木ごとき者に指摘されて、何を感じましたか。
自分は、それを堀木ごとき者に指摘されて、屈辱に似た苦さを感ずると共に、淫売婦と遊ぶ事にも、にわかに興が覚めました。
JCRRAG_010781
国語
堀木はそれを半分はお世辞で言ったのでしょうが、しかし、自分にも、重苦しく思い当る事があり、たとえば、喫茶店の女から稚拙な手紙をもらった覚えもあるし、桜木町の家の隣りの将軍のはたちくらいの娘が、毎朝、自分の登校の時刻には、用も無さそうなのに、ご自分の家の門を薄化粧して出たりはいったりしていたし、牛肉を食いに行くと、自分が黙っていても、そこの女中が、……また、いつも買いつけの煙草屋の娘から手渡された煙草の箱の中に、……また、歌舞伎を見に行って隣りの席のひとに、……また、深夜の市電で自分が酔って眠っていて、……また、思いがけなく故郷の親戚の娘から、思いつめたような手紙が来て、……また、誰かわからぬ娘が、自分の留守中にお手製らしい人形を、…...
自分は堀木に指摘された後、淫売婦と遊ぶ事に対して、どうなりましたか。
自分は堀木に指摘された後、淫売婦と遊ぶ事にも、にわかに興が覚めました。
JCRRAG_010782
国語
堀木は、また、その見栄坊のモダニティから、(堀木の場合、それ以外の理由は、自分には今もって考えられませんのですが)或る日、自分を共産主義の読書会とかいう(R・Sとかいっていたか、記憶がはっきり致しません)そんな、秘密の研究会に連れて行きました。堀木などという人物にとっては、共産主義の秘密会合も、れいの「東京案内」の一つくらいのものだったのかも知れません。自分は所謂「同志」に紹介せられ、パンフレットを一部買わされ、そうして上座のひどい醜い顔の青年から、マルクス経済学の講義を受けました。しかし、自分には、それはわかり切っている事のように思われました。それは、そうに違いないだろうけれども、人間の心には、もっとわけのわからない、おそろしいも...
堀木などという人物にとっては、共産主義の秘密会合も、どのような程度のものだったのですか。
堀木などという人物にとっては、共産主義の秘密会合も、れいの「東京案内」の一つくらいのものだったのかも知れません。
JCRRAG_010783
国語
堀木は、また、その見栄坊のモダニティから、(堀木の場合、それ以外の理由は、自分には今もって考えられませんのですが)或る日、自分を共産主義の読書会とかいう(R・Sとかいっていたか、記憶がはっきり致しません)そんな、秘密の研究会に連れて行きました。堀木などという人物にとっては、共産主義の秘密会合も、れいの「東京案内」の一つくらいのものだったのかも知れません。自分は所謂「同志」に紹介せられ、パンフレットを一部買わされ、そうして上座のひどい醜い顔の青年から、マルクス経済学の講義を受けました。しかし、自分には、それはわかり切っている事のように思われました。それは、そうに違いないだろうけれども、人間の心には、もっとわけのわからない、おそろしいも...
自分は所謂「同志」に紹介せられ、どのような事をしましたか。
自分は所謂「同志」に紹介せられ、パンフレットを一部買わされ、そうして上座のひどい醜い顔の青年から、マルクス経済学の講義を受けました。
JCRRAG_010784
国語
 海の、波打際、といってもいいくらいに海にちかい岸辺に、真黒い樹肌の山桜の、かなり大きいのが二十本以上も立ちならび、新学年がはじまると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉と共に、青い海を背景にして、その絢爛たる花をひらき、やがて、花吹雪の時には、花びらがおびただしく海に散り込み、海面を鏤めて漂い、波に乗せられ再び波打際に打ちかえされる、その桜の砂浜が、そのまま校庭として使用せられている東北の或る中学校に、自分は受験勉強もろくにしなかったのに、どうやら無事に入学できました。そうして、その中学の制帽の徽章にも、制服のボタンにも、桜の花が図案化せられて咲いていました。  その中学校のすぐ近くに、自分の家と遠い親戚に当る者の家がありましたの...
自分が入学した東北の中学校は、どのような特徴を持っていましたか。
自分が入学した東北の中学校は、海の、波打際、といってもいいくらいに海にちかい岸辺に、真黒い樹肌の山桜の、かなり大きいのが二十本以上も立ちならび、新学年がはじまると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉と共に、青い海を背景にして、その絢爛たる花をひらき、やがて、花吹雪の時には、花びらがおびただしく海に散り込み、海面を鏤めて漂い、波に乗せられ再び波打際に打ちかえされる、その桜の砂浜が、そのまま校庭として使用せられていました。
JCRRAG_010785
国語
 海の、波打際、といってもいいくらいに海にちかい岸辺に、真黒い樹肌の山桜の、かなり大きいのが二十本以上も立ちならび、新学年がはじまると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉と共に、青い海を背景にして、その絢爛たる花をひらき、やがて、花吹雪の時には、花びらがおびただしく海に散り込み、海面を鏤めて漂い、波に乗せられ再び波打際に打ちかえされる、その桜の砂浜が、そのまま校庭として使用せられている東北の或る中学校に、自分は受験勉強もろくにしなかったのに、どうやら無事に入学できました。そうして、その中学の制帽の徽章にも、制服のボタンにも、桜の花が図案化せられて咲いていました。  その中学校のすぐ近くに、自分の家と遠い親戚に当る者の家がありましたの...
その中学の制帽の徽章にも、制服のボタンにも、何が図案化せられていましたか。
その中学の制帽の徽章にも、制服のボタンにも、桜の花が図案化せられて咲いていました。
JCRRAG_010786
国語
 海の、波打際、といってもいいくらいに海にちかい岸辺に、真黒い樹肌の山桜の、かなり大きいのが二十本以上も立ちならび、新学年がはじまると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉と共に、青い海を背景にして、その絢爛たる花をひらき、やがて、花吹雪の時には、花びらがおびただしく海に散り込み、海面を鏤めて漂い、波に乗せられ再び波打際に打ちかえされる、その桜の砂浜が、そのまま校庭として使用せられている東北の或る中学校に、自分は受験勉強もろくにしなかったのに、どうやら無事に入学できました。そうして、その中学の制帽の徽章にも、制服のボタンにも、桜の花が図案化せられて咲いていました。  その中学校のすぐ近くに、自分の家と遠い親戚に当る者の家がありましたの...
その中学校のすぐ近くには、何がありましたか。
その中学校のすぐ近くには、自分の家と遠い親戚に当る者の家がありました。
JCRRAG_010787
国語
 海の、波打際、といってもいいくらいに海にちかい岸辺に、真黒い樹肌の山桜の、かなり大きいのが二十本以上も立ちならび、新学年がはじまると、山桜は、褐色のねばっこいような嫩葉と共に、青い海を背景にして、その絢爛たる花をひらき、やがて、花吹雪の時には、花びらがおびただしく海に散り込み、海面を鏤めて漂い、波に乗せられ再び波打際に打ちかえされる、その桜の砂浜が、そのまま校庭として使用せられている東北の或る中学校に、自分は受験勉強もろくにしなかったのに、どうやら無事に入学できました。そうして、その中学の制帽の徽章にも、制服のボタンにも、桜の花が図案化せられて咲いていました。  その中学校のすぐ近くに、自分の家と遠い親戚に当る者の家がありましたの...
自分の生まれ故郷と比べて、他郷はどのような場所に思われましたか。
自分の生まれ故郷と比べて、その他郷のほうが、ずっと気楽な場所のように思われました。
JCRRAG_010788
国語
 自分の人間恐怖は、それは以前にまさるとも劣らぬくらい烈しく胸の底で蠕動していましたが、しかし、演技は実にのびのびとして来て、教室にあっては、いつもクラスの者たちを笑わせ、教師も、このクラスは大庭さえいないと、とてもいいクラスなんだが、と言葉では嘆じながら、手で口を覆って笑っていました。自分は、あの雷の如き蛮声を張り上げる配属将校をさえ、実に容易に噴き出させる事が出来たのです。  もはや、自分の正体を完全に隠蔽し得たのではあるまいか、とほっとしかけた矢先に、自分は実に意外にも背後から突き刺されました。それは、背後から突き刺す男のごたぶんにもれず、クラスで最も貧弱な肉体をして、顔も青ぶくれで、そうしてたしかに父兄のお古と思われる袖が聖...
自分の人間恐怖は、どのような状態でしたか。
自分の人間恐怖は、それは以前にまさるとも劣らぬくらい烈しく胸の底で蠕動していました。
JCRRAG_010789
国語
 自分の人間恐怖は、それは以前にまさるとも劣らぬくらい烈しく胸の底で蠕動していましたが、しかし、演技は実にのびのびとして来て、教室にあっては、いつもクラスの者たちを笑わせ、教師も、このクラスは大庭さえいないと、とてもいいクラスなんだが、と言葉では嘆じながら、手で口を覆って笑っていました。自分は、あの雷の如き蛮声を張り上げる配属将校をさえ、実に容易に噴き出させる事が出来たのです。  もはや、自分の正体を完全に隠蔽し得たのではあるまいか、とほっとしかけた矢先に、自分は実に意外にも背後から突き刺されました。それは、背後から突き刺す男のごたぶんにもれず、クラスで最も貧弱な肉体をして、顔も青ぶくれで、そうしてたしかに父兄のお古と思われる袖が聖...
自分は、誰を容易に噴き出させる事が出来ましたか。
自分は、あの雷の如き蛮声を張り上げる配属将校をさえ、実に容易に噴き出させる事が出来ました。
JCRRAG_010790
国語
 自分の人間恐怖は、それは以前にまさるとも劣らぬくらい烈しく胸の底で蠕動していましたが、しかし、演技は実にのびのびとして来て、教室にあっては、いつもクラスの者たちを笑わせ、教師も、このクラスは大庭さえいないと、とてもいいクラスなんだが、と言葉では嘆じながら、手で口を覆って笑っていました。自分は、あの雷の如き蛮声を張り上げる配属将校をさえ、実に容易に噴き出させる事が出来たのです。  もはや、自分の正体を完全に隠蔽し得たのではあるまいか、とほっとしかけた矢先に、自分は実に意外にも背後から突き刺されました。それは、背後から突き刺す男のごたぶんにもれず、クラスで最も貧弱な肉体をして、顔も青ぶくれで、そうしてたしかに父兄のお古と思われる袖が聖...
自分は、朝、昼、晩、四六時中、誰を監視していたい気持でしたか。
自分は、朝、昼、晩、四六時中、竹一の傍から離れず彼が秘密を口走らないように監視していたい気持でした。
JCRRAG_010791
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 自分の人間恐怖は、それは以前にまさるとも劣らぬくらい烈しく胸の底で蠕動していましたが、しかし、演技は実にのびのびとして来て、教室にあっては、いつもクラスの者たちを笑わせ、教師も、このクラスは大庭さえいないと、とてもいいクラスなんだが、と言葉では嘆じながら、手で口を覆って笑っていました。自分は、あの雷の如き蛮声を張り上げる配属将校をさえ、実に容易に噴き出させる事が出来たのです。  もはや、自分の正体を完全に隠蔽し得たのではあるまいか、とほっとしかけた矢先に、自分は実に意外にも背後から突き刺されました。それは、背後から突き刺す男のごたぶんにもれず、クラスで最も貧弱な肉体をして、顔も青ぶくれで、そうしてたしかに父兄のお古と思われる袖が聖...
自分は、これまでの生涯に於いて、人に殺されたいと願望した事は幾度となくありましたが、人を殺したいと思った事はありましたか。
自分は、これまでの生涯に於いて、人に殺されたいと願望した事は幾度となくありましたが、人を殺したいと思った事は、いちどもありませんでした。
JCRRAG_010792
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 自分は、彼を手なずけるため、まず、顔に偽クリスチャンのような「優しい」媚笑を湛え、首を三十度くらい左に曲げて、彼の小さい肩を軽く抱き、そうして猫撫で声に似た甘ったるい声で、彼を自分の寄宿している家に遊びに来るようしばしば誘いましたが、彼は、いつも、ぼんやりした眼つきをして、黙っていました。しかし、自分は、或る日の放課後、たしか初夏の頃の事でした、夕立ちが白く降って、生徒たちは帰宅に困っていたようでしたが、自分は家がすぐ近くなので平気で外へ飛び出そうとして、ふと下駄箱のかげに、竹一がしょんぼり立っているのを見つけ、行こう、傘を貸してあげる、と言い、臆する竹一の手を引っぱって、一緒に夕立ちの中を走り、家に着いて、二人の上衣を小母さんに...
自分は、彼を手なずけるために、どのような様子で、彼を自分の寄宿している家に遊びに来るように誘いましたか。
自分は、彼を手なずけるために、まず、顔に偽クリスチャンのような「優しい」媚笑を湛え、首を三十度くらい左に曲げて、彼の小さい肩を軽く抱き、そうして猫撫で声に似た甘ったるい声で、彼を自分の寄宿している家に遊びに来るようしばしば誘いました。
JCRRAG_010793
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 自分は、彼を手なずけるため、まず、顔に偽クリスチャンのような「優しい」媚笑を湛え、首を三十度くらい左に曲げて、彼の小さい肩を軽く抱き、そうして猫撫で声に似た甘ったるい声で、彼を自分の寄宿している家に遊びに来るようしばしば誘いましたが、彼は、いつも、ぼんやりした眼つきをして、黙っていました。しかし、自分は、或る日の放課後、たしか初夏の頃の事でした、夕立ちが白く降って、生徒たちは帰宅に困っていたようでしたが、自分は家がすぐ近くなので平気で外へ飛び出そうとして、ふと下駄箱のかげに、竹一がしょんぼり立っているのを見つけ、行こう、傘を貸してあげる、と言い、臆する竹一の手を引っぱって、一緒に夕立ちの中を走り、家に着いて、二人の上衣を小母さんに...
自分が寄宿する家に竹一を遊びに誘う際、彼は、いつも、どのような様子でしたか。
自分が寄宿する家に竹一を遊びに誘う際、彼は、いつも、ぼんやりした眼つきをして、黙っていました。
JCRRAG_010794
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 自分は、彼を手なずけるため、まず、顔に偽クリスチャンのような「優しい」媚笑を湛え、首を三十度くらい左に曲げて、彼の小さい肩を軽く抱き、そうして猫撫で声に似た甘ったるい声で、彼を自分の寄宿している家に遊びに来るようしばしば誘いましたが、彼は、いつも、ぼんやりした眼つきをして、黙っていました。しかし、自分は、或る日の放課後、たしか初夏の頃の事でした、夕立ちが白く降って、生徒たちは帰宅に困っていたようでしたが、自分は家がすぐ近くなので平気で外へ飛び出そうとして、ふと下駄箱のかげに、竹一がしょんぼり立っているのを見つけ、行こう、傘を貸してあげる、と言い、臆する竹一の手を引っぱって、一緒に夕立ちの中を走り、家に着いて、二人の上衣を小母さんに...
自分が、竹一を二階の自分の部屋に誘い込んだのは、どのような時でしたか。
自分が、竹一を二階の自分の部屋に誘い込んだのは、或る日の放課後、たしか初夏の頃の事でした、夕立ちが白く降って、生徒たちは帰宅に困っていたようでしたが、自分は家がすぐ近くなので平気で外へ飛び出そうとして、ふと下駄箱のかげに、竹一がしょんぼり立っているのを見つけ、行こう、傘を貸してあげる、と言い、臆する竹一の手を引っぱって、一緒に夕立ちの中を走り、家に着いて、二人の上衣を小母さんに乾かしてもらうようにたのみ、竹一を二階の自分の部屋に誘い込むのに成功しました。
JCRRAG_010795
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 自分は、彼を手なずけるため、まず、顔に偽クリスチャンのような「優しい」媚笑を湛え、首を三十度くらい左に曲げて、彼の小さい肩を軽く抱き、そうして猫撫で声に似た甘ったるい声で、彼を自分の寄宿している家に遊びに来るようしばしば誘いましたが、彼は、いつも、ぼんやりした眼つきをして、黙っていました。しかし、自分は、或る日の放課後、たしか初夏の頃の事でした、夕立ちが白く降って、生徒たちは帰宅に困っていたようでしたが、自分は家がすぐ近くなので平気で外へ飛び出そうとして、ふと下駄箱のかげに、竹一がしょんぼり立っているのを見つけ、行こう、傘を貸してあげる、と言い、臆する竹一の手を引っぱって、一緒に夕立ちの中を走り、家に着いて、二人の上衣を小母さんに...
自分が寄宿していた家の、主な収入は、何でしたか。
自分が寄宿していた家の、主な収入は、なくなった主人が建てて残して行った五六棟の長屋の家賃のようでした。
JCRRAG_010796
国語
「耳が痛い」  竹一は、立ったままでそう言いました。 「雨に濡れたら、痛くなったよ」  自分が、見てみると、両方の耳が、ひどい耳だれでした。膿が、いまにも耳殻の外に流れ出ようとしていました。 「これは、いけない。痛いだろう」  と自分は大袈裟におどろいて見せて、 「雨の中を、引っぱり出したりして、ごめんね」  と女の言葉みたいな言葉を遣って「優しく」謝り、それから、下へ行って綿とアルコールをもらって来て、竹一を自分の膝を枕にして寝かせ、念入りに耳の掃除をしてやりました。竹一も、さすがに、これが偽善の悪計であることには気附かなかったようで、 「お前は、きっと、女に惚れられるよ」  と自分の膝枕で寝ながら、無智なお世辞を言ったくらいでし...
雨に濡れた後、竹一は、自分に対して立ったまま何と言いましたか。
雨に濡れた後、竹一は、自分に対して立ったまま「耳が痛い」「雨に濡れたら、痛くなったよ」と竹一は言いました。
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「耳が痛い」  竹一は、立ったままでそう言いました。 「雨に濡れたら、痛くなったよ」  自分が、見てみると、両方の耳が、ひどい耳だれでした。膿が、いまにも耳殻の外に流れ出ようとしていました。 「これは、いけない。痛いだろう」  と自分は大袈裟におどろいて見せて、 「雨の中を、引っぱり出したりして、ごめんね」  と女の言葉みたいな言葉を遣って「優しく」謝り、それから、下へ行って綿とアルコールをもらって来て、竹一を自分の膝を枕にして寝かせ、念入りに耳の掃除をしてやりました。竹一も、さすがに、これが偽善の悪計であることには気附かなかったようで、 「お前は、きっと、女に惚れられるよ」  と自分の膝枕で寝ながら、無智なお世辞を言ったくらいでし...
自分が、竹一の耳を見てみると、両方の耳は、どのような状態でしたか。
自分が、竹一の耳を見てみると、両方の耳は、ひどい耳だれでした。
JCRRAG_010798
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 自分には、人間の女性のほうが、男性よりもさらに数倍難解でした。自分の家族は、女性のほうが男性よりも数が多く、また親戚にも、女の子がたくさんあり、またれいの「犯罪」の女中などもいまして、自分は幼い時から、女とばかり遊んで育ったといっても過言ではないと思っていますが、それは、また、しかし、実に、薄氷を踏む思いで、その女のひとたちと附合って来たのです。ほとんど、まるで見当が、つかないのです。五里霧中で、そうして時たま、虎の尾を踏む失敗をして、ひどい痛手を負い、それがまた、男性から受ける笞とちがって、内出血みたいに極度に不快に内攻して、なかなか治癒し難い傷でした。  女は引き寄せて、つっ放す、或いはまた、女は、人のいるところでは自分をさげ...
自分には、男性と女性、どちらが難解と感じていましたか。
自分には、人間の女性のほうが、男性よりもさらに数倍難解と感じていました。
JCRRAG_010799
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 自分には、人間の女性のほうが、男性よりもさらに数倍難解でした。自分の家族は、女性のほうが男性よりも数が多く、また親戚にも、女の子がたくさんあり、またれいの「犯罪」の女中などもいまして、自分は幼い時から、女とばかり遊んで育ったといっても過言ではないと思っていますが、それは、また、しかし、実に、薄氷を踏む思いで、その女のひとたちと附合って来たのです。ほとんど、まるで見当が、つかないのです。五里霧中で、そうして時たま、虎の尾を踏む失敗をして、ひどい痛手を負い、それがまた、男性から受ける笞とちがって、内出血みたいに極度に不快に内攻して、なかなか治癒し難い傷でした。  女は引き寄せて、つっ放す、或いはまた、女は、人のいるところでは自分をさげ...
自分は幼い時から、何とばかり遊んで育ってきましたか。
自分は幼い時から、女とばかり遊んで育ったといっても過言ではないと思っています。
JCRRAG_010800
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 自分には、人間の女性のほうが、男性よりもさらに数倍難解でした。自分の家族は、女性のほうが男性よりも数が多く、また親戚にも、女の子がたくさんあり、またれいの「犯罪」の女中などもいまして、自分は幼い時から、女とばかり遊んで育ったといっても過言ではないと思っていますが、それは、また、しかし、実に、薄氷を踏む思いで、その女のひとたちと附合って来たのです。ほとんど、まるで見当が、つかないのです。五里霧中で、そうして時たま、虎の尾を踏む失敗をして、ひどい痛手を負い、それがまた、男性から受ける笞とちがって、内出血みたいに極度に不快に内攻して、なかなか治癒し難い傷でした。  女は引き寄せて、つっ放す、或いはまた、女は、人のいるところでは自分をさげ...
男のひとに対し、調子に乗ってあまりお道化を演じすぎると、どのような結果になる事を知っていましたか。
男のひとに対し、調子に乗ってあまりお道化を演じすぎると、さすがにいつまでもゲラゲラ笑ってもいませんし、それに自分も男のひとに対し、調子に乗ってあまりお道化を演じすぎると失敗するという事を知っていました